子どもの成長136 2026/09/28 大規模スポーツイベント観客の患者数は「体感温度」と関連、気温や湿度が高いほど増加 Heat Indexが10度上昇すると、試合中の患者が1.46人増える では、研究の主題である、Heat Indexと1試合あたりの患者数との関連の解析結果だが、相関係数(r)は0.37であり、中程度の正の相関関係が認められた(p<0.01)。つまり、気温や湿度が高くHeat Indexが上昇するほど、スタジアム内の医務室で医師対応が必要な患者数が、有意に増えることが明らかになった。線形解析からは、Heat Indexが10度上昇すると患者数が1.46人増えると計算された。 患者の主訴と処置内容 スタジアム内の医務室を受診した患者の主訴として最も多かったのは筋骨格系の訴えで31人(34%)、次いでふらつきが24人(26%)、酩酊状態が9人(10%)だった。 治療を複数回受けた患者もいたため、全試合で述べ108件の処置が行われた。処置内容で最も多かったのは、氷嚢33人(31%)、鎮痛薬(NSAIDsまたはアセトアミノフェン)投与21人(19%)、経口補水液投与11人(10%)などだった。 全患者のうち32人(35%)は病院への搬送が必要と判断され、このうち18人(19.2%)が救急車で搬送された。14人は救急隊による搬送を拒否し、個人の車で搬送された。911番(日本の119番)通報が必要になったケースはなかった。なお、ふらつきによる受診は上記のように全体の26%だったにもかかわらず、病院への搬送を要した症例の38%を占めるという結果だった。 論文の結論は、「Heat Indexは、大規模スポーツイベントである野球の試合における患者発生率と中程度の有意な関連があることがわかった。本研究では、研究期間中の天候の穏やかさから、事前に計画されていた医療体制の供給を上回る医療需要は発生しなかった。しかし、このような相関関係が存在するという知見は、今後の気候の変化が予測される中で、大規模イベントの医療計画の策定に役立つ可能性がある」と総括されている。
子どもの成長135 2026/09/25 大規模スポーツイベント観客の患者数は「体感温度」と関連、気温や湿度が高いほど増加 米国内での野球のゲーム73試合を対象に解析 スタジアムの特徴と観客数 この研究では、2023年4~9月に米国北東部の都市にあるスタジアムで開催された野球の試合、81ゲームからデータが取得された。この球場は収容観客数4万7,309人で、周囲全体が囲われた構造であり、日陰は少なく座席の多くは屋根のない部分に設けられていた。 81試合のうち8試合は解析に必要なデータが十分でなかったため除外し、73試合を解析対象とした。観客数は2万5,007~4万7,295人の範囲で平均4万824人だった。 スタジアムで発生した患者数 会場での医療需要は、本人または救急救命士によって医務室に搬送された患者のうち、医師の対応が必要だった患者数を、原因が熱中症か否かにかかわらずカウントした。なお、市販薬の希望のみで医務室を訪問した患者は除外した。その結果、調査対象期間中の総観客数292万6,363人のうち、受診患者数は92人であり、1試合あたり0~5人の範囲で、平均は1.92±1.13人だった。 観客10万人あたりの患者数(patient presentation rates;PPR)は5.04±1.13であり、7月が6.09±1.66で最も高く、4月が3.19±1.13で最も低かった。 試合開始時点のHeat Index(体感温度) 気温と相対湿度に基づき算出した試合開始時点のHeat Index(体感温度)は、華氏46~91度(摂氏7.8~32.8℃)の範囲であり、平均は華氏70.8度(摂氏21.6℃)だった。 なお、日本では熱中症リスクの評価のために、気温と相対湿度だけでなく、輻射熱や気流も利用して算出する湿球黒球温度(wet bulb globe temperature;WBGT〈いわゆる暑さ指数〉)が用いられており、国際的にもWBGTが使われることが多いが、本研究ではデータが把握されていなかったことから、Heat Indexが用いられている。著者らは論文の考察において、「今後の研究ではWBGTでの検討が必要だろう」と記している。
子どもの成長134 2026/09/24 大規模スポーツイベント観客の患者数は「体感温度」と関連、気温や湿度が高いほど増加 米国の北東部の都市にある野球のスタジアムで行われた70試合以上のゲームで、スタジアム内の医務室を受診した観客の患者数が、その試合の開始時刻の気温と湿度から算出した「Heat Index(体感温度)」と、中程度の相関関係があるとする研究結果が報告された。著者らは、「この結果は今後の気候変動を見据えた大規模スポーツイベント医療計画に役立つ知見だ」としている。 マスギャザリングでの医療需要 マスギャザリング(mass gathering)と呼ばれる大規模イベントでは、人々が集中することに伴い一時的に当該地域の医療受給バランスが逼迫することがあり、事前の綿密な医療計画の立案が必要とされる。多くの国で、イベント会場の収容人数や予測される観客数に応じて、定められた人数の医師や医療スタッフを予め配置することを義務付けている。例えば米国ニューヨーク州では、5,000人を超えるイベントでは15分以内に医師が到着可能な体制を確保すること、3万人を超えるイベントでは現場に医師を配置することが義務化されている。 マスギャザリングで発生する医療需要については、多くの研究で、三つの因子によって左右されることが報告されている。一つ目は観客の年齢や健康状態などの生物医学的因子、二つ目は観客の文化や行動、参加理由などの心理社会的因子、三つ目は会場の特徴や天候などの環境因子である。 三つ目の環境因子の中では「暑さ」が重要な要素とされており、暑さによる熱中症の増加が世界中で報告されている。これまでもマスギャザリングにおける気温と医療需要の変化との関係を解析した報告はいくつかあるが、気温に相対湿度を加えて算出する、より熱中症リスクを正確に評価可能な「Heat Index(体感温度)」と医療需要の変化との関係は、十分検討されていない。以上を背景として、今回紹介する論文の著者らは、大規模スポーツイベントにおけるその関連を探った。
子どもの成長133 2026/09/18 熱ストレスや脱水、および両者の重複で、長時間運動中の炭水化物利用はどう変化する? 脱水のグリコーゲン利用への影響 脱水が長時間運動中のグリコーゲン利用に及ぼす影響を検討した研究は7条件で実施されており、そのうち2条件で、脱水によりグリコーゲン利用が有意に増加することが示されていた。メタ解析の結果、脱水によりグリコーゲン利用が有意に増加することが示された(SMD=0.62〈0.22~1.03〉)。研究間の異質性は中等度だった(I2=48%)。 これを暑熱負荷の有無別にサブグループ解析した場合、暑熱負荷を加えるか否かにかかわらず、脱水によりグリコーゲン利用が有意に増加することが示されたが、暑熱負荷を加えた1条件の研究では、より大きな影響が認められた。具体的には、暑熱負荷を加えない場合がSMD=0.47(0.14~0.80)であるのに対して(I2=35%)、暑熱負荷を加えた1報の報告はSMD=1.62(0.49~2.75)だった。 暑熱下では脱水回避、非暑熱下では体幹温度を上げない戦略がグリコーゲン温存に働く これらの結果は、以下の3点に整理される。 呼吸交換比(RER)、炭水化物の酸化、グリコーゲンの利用で評価される炭水化物の利用は、暑熱環境では一貫して増加する。 脱水は、RER、炭水化物の酸化、グリコーゲンの利用を増加させる。しかし、暑熱環境下とそうでない場合とで分けると、脱水は暑熱環境でのみ、RERと炭水化物の酸化を有意に増加させ、非暑熱環境では脱水による炭水化物利用への有意な影響は認められない。 これらの結果は、長時間の持久力運動中の暑熱曝露によって炭水化物の利用が亢進し、その一方で脱水の影響は非暑熱環境では明らかでないことを示唆している。 著者らはこのトピックに関する既報文献の考察を加えたうえで、「炭水化物の需要を増やす主な要因は、体幹温度の上昇、とくに筋温の上昇であると考えられる。これらの知見は、とくに暑熱環境でない場合、運動中の炭水化物利用を抑制するための最も重要な戦略が水分補給ではない可能性があることを示唆している。むしろ、長時間のランニングなど、水分摂取の可能性が限られる状況においては、体幹温度を管理するための冷却戦略を実施することが効果的である可能性がある」と結論付けている。
子どもの成長132 2026/09/17 暑熱ストレスや脱水、および両者の重複で、長時間運動中の炭水化物利用はどう変化する? 暑熱負荷の炭水化物の酸化への影響 暑熱環境が長時間運動中の炭水化物の酸化に及ぼす影響を検討した研究は21条件で実施されており、そのうち5条件で、暑熱負荷により炭水化物の酸化が有意に亢進することが示されていた。メタ解析の結果、暑熱負荷により炭水化物の酸化が有意に亢進することが示された(SMD=0.29〈0.08~0.51〉)。研究間の異質性は中等度だった(I2=50%)。 暑熱負荷のグリコーゲン利用への影響 暑熱環境が長時間運動中のグリコーゲン利用に及ぼす影響を検討した研究は9条件で実施されており、そのうち5条件で、暑熱負荷によりグリコーゲン利用が有意に増加することが示されていた。メタ解析の結果、暑熱負荷によりグリコーゲン利用が有意に増加することが示された(SMD=0.78〈0.22~1.34〉)。研究間の異質性は中等度だった(I2=71%)。 脱水による炭水化物利用への影響は暑熱負荷の有無で異なる 脱水のRERへの影響 脱水が長時間運動中のRERに及ぼす影響を検討した研究は24条件で実施されており、そのうち3条件で、脱水によりRERが有意に上昇することが示されていた。メタ解析の結果、脱水によりRERが有意に上昇することが示された(SMD=0.27〈0.12~0.42〉)。研究間の異質性は低かった(I2=13%)。 これを、暑熱負荷の有無別にサブグループ解析した場合、暑熱負荷を加えた場合には脱水によりRERが有意に上昇する一方(SMD=0.37〈0.10~0.64〉、I2=42%)、暑熱負荷を加えない場合は脱水によるRERの有意な上昇は認められなかった(SMD=0.21〈-0.00~0.43〉、I2=0%)。 脱水の炭水化物の酸化への影響 脱水が長時間運動中の炭水化物の酸化に及ぼす影響を検討した研究は17条件で実施されており、そのうち4条件で、脱水により炭水化物の酸化が有意に亢進することが示されていた。メタ解析の結果、脱水により炭水化物の酸化が有意に亢進することが示された(SMD=0.31〈0.11~0.51〉)。研究間の異質性は中等度だった(I2=41%)。 これを、暑熱負荷の有無別にサブグループ解析した場合、暑熱負荷を加えた場合には脱水により炭水化物の酸化が有意に亢進する一方(SMD=0.37〈0.14~0.60〉、I2=17%)、暑熱負荷を加えない場合は脱水による炭水化物の酸化の有意な亢進は認められなかった(SMD=0.27〈-0.14~0.67〉、I2=59%)。