子どもの成長37 2026/04/30 思春期のネット依存が食事の質の低下を招き、摂食障害のリスクを高める可能性 トルコの高校生対象調査 思春期におけるインターネット依存やソーシャルメディア使用障害は、食事の質の低下を介して摂食障害のリスク上昇と関連しているとする研究結果が報告された。トルコの高校生を対象とする横断研究の媒介分析とネットワーク分析からの知見であり、著者らはネット依存をターゲットとする介入が、この世代の食習慣と精神的健康を向上させ得ると述べている。 思春期のネット依存や食習慣の乱れは、後年の健康にも影響を及ぼす可能性がある 思春期は心理社会的発達の重要な時期であり、保護者の影響力の低下、および、感受性の高まりにより仲間から受ける力の上昇によって行動パターンが形成され、それが精神的・および身体的健康を左右する。思春期の行動パターンのうち、乱れた食行動(disordered eating;DE)は、有病率の高さと影響の及ぶ範囲の広さから、とくに重要な懸念事項として浮上している。最近のシステマティックレビューとメタ分析では、思春期の約22%に乱れた食行動(DE)がみられると推定されている。DEはしばしば、食事制限、過食、体型への過度なこだわりと結びつき、摂食障害(eating disorders;ED)のリスクと関連している。 一方、思春期のもう一つの問題として近年、インターネット依存症とソーシャルメディア使用障害の双方を含めた、問題のあるインターネットの使用(problematic internet use;PIU)の重要性が指摘されるようになった。PIUは、感受性とアイデンティティー形成が進む思春期において不適応な行動を増やすと考えられており、かつDEの修正可能な危険因子として報告されている。 他方、健康的な食習慣を含む健康的なライフスタイルは、ストレスや不安を軽減し、感情を安定させることが示されている。よって、健康的な食生活を守ることは、DEとPIU双方のリスクを抑制する可能性がある。 健康的な食習慣のパターンとして、地中海食が世界中で広く知られ実践されている。大うつ病性障害を含む精神疾患の治療における地中海食の有効性に関するエビデンスも存在し、さらに思春期世代の心理的苦痛の軽減や自己管理力との関連の報告もある。 以上を背景として本論文の著者らは、地中海食の実践状況で評価した食事の質が、思春期の子どものPIUの少なさやDEリスクと関連している可能性を想定し、以下の研究を行った。研究仮説として、(1)PIUはDEリスクと正の相関関係にある一方、食事の質は負の相関関係がある、(2)食事の質はPIUとDEリスクの関係を媒介する――という2項目が設定された。 トルコ国内の高校生を対象に横断調査を行い、媒介分析およびネットワーク分析 研究対象は、トルコ国内から無作為に選ばれた高校3校の生徒647人。乱れた食行動(DE)または問題のあるインターネットの使用(PIU)のため治療中の生徒、出席していない生徒、保護者の同意のない生徒は除外されている。なお、事前の統計学的検討で、この仮説の検証に必要なサンプルサイズは631と計算されていた。 PIUやDEのリスク、食事の質などの評価には次項に挙げる、いずれも精度検証済みの評価法を用いた。 解析対象となった高校生の特徴 解析対象者のおもな特徴は、年齢16.0±0.90歳、男子46%で、BMIは20.8±3.0であり、31%が低体重、11%が過体重・肥満だった。 摂食態度調査票(Eating Attitudes Test;EAT-26)は26項目で、それぞれ0~4点のリッカートスコアで回答し、合計20点以上の場合、乱れた食行動(DE)のリスクありと判定する。本研究では平均13.1±11.0点であり、20点以上でDEリスクありとされたのは18.2%だった。 若年者対象インターネット依存度テスト短縮版(Young Internet Addiction Test;YIAT-SF)は、12項目でそれぞれ1~5点のリッカートスコアで回答し、スコアが高いほど依存度が高いと判定する。本研究では平均31.3±9.6点であり、乱れた食行動(DE)リスクの有無で比較すると、DEリスクなし群(30.0±9.0点)に比較しDEリスクあり群(36.0±10.64点)は、スコアが有意に高かった(p<0.001)。 ソーシャルメディア障害(Social media disorder;SMD)尺度は、9項目の質問の5項目以上に該当する場合に、ソーシャルメディア障害と判定する。本研究での平均該当項目数は3.1±2.3であり、乱れた食行動(DE)リスクなし群(2.9±2.2)に比較しDEリスクあり群(4.1±2.5)は該当項目数が有意に多かった(p<0.001)。 地中海食品質指数(Mediterranean Diet Quality Index;KIDMED)は16項目からなり、3点以下は食事の質が悪い、4~7点は改善が必要、8~12点は食事の質が良いと判定する。本研究では平均4.4±2.3点であり、DEリスクなし群(4.3±2.3点)に比較しDEリスクあり群(5.0±2.4点)は、スコアが有意に高かった(p=0.004)。 このほかに、DEリスクの有無で、性別の分布(女子の割合)、世帯収入、父親の教育歴、および、1日のネット利用が2時間以上の割合については有意差がなかったものの、母親の教育歴に有意差がみられ、DEリスクあり群で大学・大学院以上の割合が有意に高かった(18.0 vs 28.0%、p=0.04)。
子どもの成長36 2026/04/28 ヒト消化管を模したin vitro実験系で、さまざまな飲料のカフェイン生体利用能を評価 この研究では、スペインのマドリードのスーパーマーケットで販売されている、さまざまなブランドのソフトドリンク、エナジードリンク、コーヒー、紅茶、緑茶などのカフェイン摂取後の動態が、ヒトの消化管を模したin vitroのモデルで分析された。このモデルは、口腔・胃・小腸に相当する酵素やpH環境を再現したもので、吸収可能な状態に消化されるカフェインの割合(バイオアクセシビリティー)を評価。また、腸管での吸収を模倣した分子量12kDaの透析膜を用いて、透過したカフェイン量から、バイオアベイラビリティー(生体利用能)を推定した。 カフェイン含有量はコーヒーが顕著に高い まず、各飲料に含まれているカフェインの量を測定し、製品ラベルに記されている値とよく一致することを確認した。 測定された含有量はコーヒーが最も高く、2,333mg/Lだった。コーヒー以外では、エナジードリンクが242~330mg/L、紅茶は約170mg/L、緑茶は約100mg/L、ソフトドリンクは100mg/L未満だった。 バイオアクセシビリティーは、カテゴリーによらず、どれもほぼ100% 次に、摂取したカフェインのうち吸収可能な状態になる割合をみると、83~112%の範囲に分布し、総じて高いバイオアクセシビリティーが認められた。示されたこのように高いバイオアクセシビリティーについて論文中では、「カフェインの溶解性が高いため消化管内での消化過程でほとんど分解されないことを示唆していると考えられる」と考察されている。 バイオアベイラビリティーは、コーヒーは低いが吸収量自体は多い 続いて評価したバイオアベイラビリティーは、52~79%の範囲に分布していた。製品カテゴリー別にみると、ソフトドリンクが65.6~79%、緑茶が76%、紅茶70~75%、エナジードリンク52~72%で、コーヒーは62%と低かった。著者らは、「コーヒーに含まれるカフェインのバイオアベイラビリティーは高くはないが、コーヒーはカフェイン含有量自体が多いため、吸収されるカフェインは多くなるだろう」としている。 摂取1機会あたりのカフェインの体内吸収量はエナジードリンクが多い 最後に、上記の各飲料のカフェインのバイオアベイラビリティーを基に、解析対象とした製品の容量(ボトル製品の場合)、または標準的な1杯あたりの容量(コーヒー、紅茶、緑茶)を摂取した場合に、生体に吸収されるカフェインの量を求めた。すると、エナジードリンクは1本で89~115mgとなり、製品カテゴリー別で最も多く、次いでコーヒーが43~86mgだった。そのほかの飲料は、紅茶が24~25mg、緑茶15mg、ソフトドリンク10~24mgとなった。 なお、この試算に基づくと、仮にコーヒー以外からカフェインを一切とらないと仮定した場合、エスプレッソコーヒーのシングルなら1日最大9杯、ダブルなら最大4杯まで摂取が許容されるという。ただし、カフェインはコーヒー以外の飲料や嗜好品、医薬品などにも含まれているため、実際にはこれより少量で推奨の上限に達する。 これらの結果に基づき論文の結論には、「製品のラベルにはカフェイン含有量が記載されているが、最終的に血液中に到達する量は、製品により大きく異なる可能性がある」とし、また健康リスクの評価のため、エナジードリンクに含まれているカフェインの上限量設定を検討する必要性に言及している。
子どもの成長35 2026/04/27 「摂取量=吸収量ではない」エナジードリンク・コーヒー・紅茶などのカフェイン吸収量を解析 コーヒーや紅茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインのうち、実際に体内に吸収される割合(バイオアベイラビリティー〈生体利用能〉)を、消化管を模した実験系で検討した研究結果が報告された。検討した飲料の中では、コーヒーの生体利用能は最も低かったが、カフェイン含有量そのものが高いため、吸収されるカフェインの量としては多くなりやすいことなどが示されている。 「カフェインの含有量×摂取量=体内で利用されるカフェイン量」ではない カフェインはコーヒーや紅茶などの植物成分に含まれている天然化合物で、その作用は古くから研究されてきている。また、炭酸飲料、エナジードリンク、サプリメントなどに用いられ、精神的な刺激作用を有する食品として世界中で広く摂取されている。加えて、反応時間の短縮や身体機能の刺激作用があるため、アスリートの間ではとくに多く利用されている。 その一方、よく知られているように、カフェインには、心拍数増加、不安、不眠などの悪影響があるため、多くの国や組織が摂取上限量を示している。例えば欧州食品安全機関(European Food Safety Authority;EFSA)は、1機会につき200mg以上または1日につき400mgを超えるカフェインは悪影響を来し得ると警告している。ただし、EFSAの推奨は、飲食物中の成分のバイオアクセシビリティーやバイオアベイラビリティーが考慮されていないため、カフェインを含む飲料の摂取量の情報のみでは、実際の曝露量の推定が不確かなものになってしまう可能性がある。つまり、バイオアクセシビリティーやバイオアベイラビリティーが低い飲料と高い飲料では、カフェインの量が同等になる容量を摂取したとしても、実際に体内で利用されるカフェインの量が異なる。 このような未解決のギャップに対応するため、本論文の著者らは、ヒトの消化管を模したin vitro実験系で、カフェインのバイオアクセシビリティーとバイオアベイラビリティーを製品ごとに検討した。なお、バイオアクセシビリティーとは摂取した成分のうち消化過程で吸収可能な状態になる割合のことで、バイオアベイラビリティーとは実際に体内に吸収・利用される割合のことであり、後者については日本語で「生体利用能」と呼ばれている。
子どもの成長34 2026/04/24 有酸素運動で効果量が大きい傾向があるものの、運動のタイプによらず有意 介入に用いた運動のタイプ別のサブグループ解析も実施された。その結果、有酸素運動でより高いSMDが示される傾向にあったが、サブグループ間での有意差はなく(p=0.562)、全体解析の結果はSMD=0.47(0.35~0.60)、I2=66.5%であり、運動介入はそのタイプによらず未成年の認知機能を向上させ得ると考えられた。サブグループごとの解析結果は以下のとおり。 有酸素運動による介入を行ったRCTは20件だった。19件の研究はSMDが0を上回っており、かつ、7件の研究は95%信頼区間の下限が0を超え、単独でも有意な影響を示していた。1件の研究はSMDが0を下回っていたが、信頼区間の上限は0を超えていた。メタ解析の結果はSMD=0.53(0.32~0.73)、I2=74.2%だった。 高強度インターバルトレーニングによる介入を行ったRCTは4件だった。いずれの研究もSMDは0を上回っていたが95%信頼区間が0をまたぎ、それぞれ単独では有意な影響を示していなかった。しかしメタ解析の結果は、SMD=0.30(0.05~0.56)と有意であり、研究間の異質性を認めなかった(I2=0%)。 抵抗力トレーニングによる介入を行ったRCTは2件だった。いずれの研究もSMDは0を上回っていたが95%信頼区間が0をまたぎ、それぞれ単独では有意な影響を示していなかった。しかしメタ解析の結果は、SMD=0.46(0.10~0.83)と有意であり、研究間の異質性を認めなかった(I2=0%)。 複合運動よる介入を行ったRCTは8件だった。いずれの研究もSMDが0を上回っており、かつ、5件の研究は95%信頼区間の下限が0を超え、単独でも運動介入の有意な影響を示していた。メタ解析の結果はSMD=0.51(0.29~0.73)、I2=67.4%だった。
子どもの成長33 2026/04/23 運動介入は未成年の認知機能を向上させ得る 評価されていた認知機能は、実行機能、注意機能、認知的柔軟性(状況の変化に応じて思考や行動を切り替える能力)、抑制制御(不適切な反応や衝動を抑えて行動をコントロールする能力)、ワーキングメモリ(一時的に保持できる情報の量とその処理能力)であり、それら評価項目ごとにメタ解析が行われた。 実行機能については7件のRCTのデータがメタ解析の対象となった。いずれの研究も、標準化平均差(SMD)は0を上回っていたが95%信頼区間が0をまたぎ、それぞれ単独では実行機能に対する運動介入の有意な影響を示していなかった。しかしメタ解析からは、SMD=0.21(95%CI;0.06~0.37)で研究間の異質性はなく(I2=0%)、運動介入により実行機能が向上することが示された。 注意機能については9件のRCTのデータがメタ解析の対象となった。いずれの研究もSMDが0を上回っており、かつ、6件の研究は95%信頼区間の下限が0を超え、単独でも運動介入の有意な影響を示していた。メタ解析の結果はSMD=0.56(0.34~1.22)で、運動介入により注意機能が向上することが示された。ただし研究間の異質性が高かった(I2=71%)。 認知的柔軟性については5件のRCTのデータがメタ解析の対象となった。4件の研究はSMDが0を上回っており、かつ、3件の研究は95%信頼区間の下限が0を超え、単独でも運動介入の有意な影響を示していた。ただし1件の研究はSMDが0を下回っていた(信頼区間の上限は0超)。メタ解析の結果はSMD=0.53(0.04~1.02)で、運動介入により認知的柔軟性が向上することが示された。ただし研究間の異質性が高かった(I2=83%)。 抑制制御については10件のRCTのデータがメタ解析の対象となった。いずれの研究もSMDが0を上回っており、かつ、3件の研究は95%信頼区間の下限が0を超え、単独でも運動介入の有意な影響を示していた。メタ解析の結果はSMD=0.58(0.22~0.86)で、運動介入により抑制制御が向上することが示された。ただし研究間の異質性が高かった(I2=78%)。 ワーキングメモリについては3件のRCTのデータがメタ解析の対象となった。いずれの研究も、標準化平均差(SMD)は0を上回っていたが95%信頼区間が0をまたぎ、それぞれ単独では実行機能に対する運動介入の有意な影響を示していなかった。しかしメタ解析からは、SMD=0.54(0.16~0.91)で研究間の異質性はなく(I2=0%)、運動介入によりワーキングメモリが向上することが示された。