教育・保育要領解説15 2023/12/28 ③遊びを通しての総合的な指導 ア 乳幼児期における遊び 乳幼児期の生活のほとんどは、遊びによって占められている。遊びの本質は、人が周囲の事物や他の人たちと思うがままに多様な仕方で応答し合うことに夢中になり、時の経つのも忘れ、その関わり合いそのものを楽しむことにある。すなわち遊びは遊ぶこと自体が目的であり、人の役に立つ何らかの成果を生み出すことが目的ではない。しかし、乳幼児期の遊びには園児の成長や発達にとって重要な体験が多く含まれている。 遊びにおいて、園児が周囲の環境に思うがままに多様な仕方で関わるということは、園児が周囲の環境に様々な意味を発見し、様々な関わり方を発見するということである。例えば、木の葉を木の葉として見るだけではなく、器として、お金として、切符として見ることがある。また、砂が水を含むと固形状になり、さらには、液状になることを発見し、その状態の変化とともに、異なった関わり方を発見する。これらの意味や関わり方の発見を、園児は、思考を巡らし、想像力を発揮して行うだけでなく、自分の体を使って、また、友達と共有したり、協力したりすることによって行っていく。さらに、遊びを通じて友達との関わりが深まってくるにつれて、ときには自分の思いや考えを意識して表現し、相手に伝えたり、互いの考えを出し合ったりするようになっていく。 そして、このような発見の過程で、園児は、達成感、充実感、満足感、挫折感、葛藤などを味わい、精神的にも成長する。 このように、自発的な活動としての遊びにおいて、園児は心身全体を働かせ、様々な体験を通して心身の調和のとれた全体的な発達の基礎を築いていくのである。その意味で、自発的な活動としての遊びは、乳幼児期特有の学習なのである。したがって、幼保連携型認定こども園における教育及び保育は、遊びを通しての指導を中心に行うことが重要である。 「遊びが大事」とよく言われますが、そのことはここに明記されていることであり、遊びを通しての学習の意味をしっかりと踏まえ、さらにその遊びを通しての指導についても理解し、専門性を持って対応することが保育教諭としての役割です。学ばずして、遊びが大事と言うのは簡単なのですが、このことを意識し常に専門性を高める学びをして保育を実践していくことが大切です。
教育・保育要領解説14 2023/12/27 ② 乳幼児期にふさわしい生活の展開 イ 友達と十分に関わって展開する生活 乳幼児期には、次第に園児は自分以外の園児の存在に気付き、友達と遊びたいという気持ちが高まり、友達との関わりが盛んになる。相互に関わることを通して、園児は自己の存在感を確認し、自己と他者の違いに気付き、他者への思いやりを深め、集団への参加意識を高め、自律性を身に付けていく。このように、乳幼児期には社会性が著しく発達していく時期であり、友達との関わりの中で、園児は相互に刺激し合い、様々な物や事柄に対する興味や関心を深め、それらに関わる意欲を高めていく。それゆえ、園生活では、園児が友達と十分に関わって展開する生活を大切にすることが重要である。 子どもの発達において、自分以外の存在に気づくことが大切で、友達と遊びたいという気持ちの高まりによって、関わりが生まれます。その際どうしても密になりすぎて、さらには他者との対応を学ぶ時期でありトラブルも起こります。そこで初めて他者との違いに気づき、思いやりや譲り合うことなどを学んでいきます。子ども同志の関わりこそ集団生活である保育施設での大切な学びであります。
教育・保育要領解説13 2023/12/26 (4) 幼保連携型認定こども園における教育及び保育の基本に関連して重視する事項 ② 乳幼児期にふさわしい生活の展開 ア 興味や関心に基づいた直接的、具体的な体験が得られる生活 乳幼児期の生活は、そのほとんどは興味や関心に基づいた自発的な活動からなっている。この興味や関心から発した直接的で具体的な体験は、園児が発達する上で豊かな栄養となり、園児はそこから自分の生きる世界について多くのことを学び、様々な力を獲得していく。興味や関心から発した活動を十分に行うことは、園児に充実感や満足感 を与え、それらが興味や関心を更に高めていく。それゆえ、園生活では、園児が主体的に環境と関わり、十分に活動し、充実感や満足感を味わうことができるようにすることが大切である。 直接的で具体的な体験が、子どもの成長にとって大切であります。例えば、図鑑で動物を見るとしましょう。これだけでなく動物園等に出かけ実際に見るといったことが、豊かな栄養となる。そこから興味や関心が深まるものと思われます。様々な体験をすることが乳幼児期にとって大切なことと考えます。大人からすれば些細なことかもしれない体験も充実感や満足感を味わうことができるのです。
教育・保育要領解説12 2023/12/25 第1節幼保連携型認定こども園における教育及び保育の基本及び目標等 1 幼保連携型認定こども園における教育及び保育の基本 (4) 幼保連携型認定こども園における教育及び保育の基本に関連して重視する事項 環境を通して教育及び保育を行うということは園児の生活を大切にすることである。乳幼児期には特有の心性や生活の仕方がある。それゆえ、幼保連携型認定こども園で展開される生活や指導の在り方は乳幼児期の特性にかなったものでなければならない。このようなことから、特に重視しなければならないこととして、「安心感と信頼感をもっていろいろな活動に取り組む体験を十分に積み重ねられるようにすること」、「乳幼児期にふさわしい生活が展開されるようにすること」、「遊びを通しての総合的な指導が行われるようにすること」、「園児一人一人の特性や発達の過程に応じた指導が行われるようにすること」の4点が挙げられる。 これらの事項を重視して教育及び保育を行わなければならないが、その際には、同時に、保育教諭等が園児一人一人の行動の理解と予想に基づき、計画的に環境を構成すべきこと及び保育教諭等が園児の活動の場面に応じて様々な役割を果たし、園児の活動を豊かにすべきことを踏まえなければならない。 乳幼児期の教育及び保育は、将来への見通しをもって、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものである。 ① 安心感と信頼感をもっていろいろな活動に取り組む体験 乳幼児期は、自分の存在が周囲の大人に認められ、守られているという安心感から生じる安定した情緒が支えとなって、次第に自分の世界を拡大し、自立した生活へと向かっていく。同時に、園児は自分を守り、受け入れてくれる大人を信頼する。すなわち大人を信頼するという確かな気持ちが園児の発達を支えているのである。この時期、園児は自ら世界を拡大していくために、あらゆることに挑戦し、自分でやりたいという気持ちが強まる。その一方で、信頼する大人に自分の存在を認めてもらいたい、愛されたい、支えられたいという気持ちをもっている。したがって、園生活では、園児は保育教諭等を信頼し、その信頼する保育教諭等によって受け入れられ、見守られているという安心感をもつことが必要である。その意識の下に、必要なときに保育教諭等から適切な援助を受けながら、園児が自分の力でいろいろな活動に取り組む体験を積み重ねることが大切にされなければならない。それが自立へ向かうことを支えるのである。 安定感と信頼感をもって子ども達が活動や体験を重ねられるようにするには、保育者の人的環境や普段からの信頼関係がなければ成り立ちません。指導においても保育者主導や一方的な考えや指導者個人の概念でもありません。現行の社会においてのあたりまえを重視しつつ、個々の特性や発達を理解して行われるものだと受け止めています。昔はこうだったとの経験や勘での教え込みでもありません。これまでの保育を否定されるものでもなく、時代に沿った指導が必要です。
教育・保育要領解説11 2023/12/22 第1節幼保連携型認定こども園における教育及び保育の基本及び目標等 1 幼保連携型認定こども園における教育及び保育の基本 (3) 幼保連携型認定こども園における指導の意義 一般に「指導」という場合、幼保連携型認定こども園における指導は、園生活全体を通して園児の発達の実情を把握して園児一人一人の特性や発達の課題を捉え、園児の行動や発見、努力、工夫、感動などを温かく受け止めて認めたり、共感したり、励ましたりして心を通わせ、園生活の流れや発達などに即した具体的なねらいや内容にふさわしい環境を設定し、園児の展開する活動に対して必要な助言・指示・承認・共感・励ましなどが含まれる。 こうした指導は、乳幼児の理解に基づく指導計画の作成、環境の構成と活動の展開、園児の活動に沿った必要な援助的な関わり、評価に基づいた新たな指導計画の作成といった循環の中で行われるものである。教育・保育要領第1章第2の2(3)クでは「園児の主体的な活動を促すためには、保育教諭等が多様な関わりをもつことが重要であることを踏まえ、保育教諭等は、理解者、共同作業者など様々な役割を果たし、園児の情緒の安定や発達に必要な豊かな体験が得られるよう、活動の場面に応じて、園児の人権や園児一人一人の個人差等に配慮した適切な指導を行うようにすること。」としている。このため、保育教諭等は、主体的な活動を通して園児一人一人が着実な発達を遂げていくために、園児の活動の場面に応じて様々な役割を果たしつつ、適切な指導をしていかなければならない。幼保連携型認定こども園における教育及び保育において、指導上、保育教諭等が担う役割は極めて重要なのである。 指導は、相手に対して一方的に知識や技能を与えるものであるという受け止め方をされることもあるが、乳幼児保育においては、園児の展開する活動に対して必要な助言・指示・承認・共感・励ましなどが含まれる。とされています。一部学校ではいまだに「指導」の目的は極端に言えば「矯正」させるべく言葉にも聞こえます。時代に合わせた指導が大切であり、乳幼児期には適切な助言や励まし、共感であるべきです。教職員保育者もアップデイトしていかなくてはなりません。