教育振興基本計画24 2025/02/28 Ⅱ.今後の教育政策に関する基本的な方針 ① グローバル化する社会の持続的な発展に向けて学び続ける人材の育成 (リカレント教育を通じた高度専門人材育成) ○我が国は諸外国と比べて労働生産性の低さが課題となっているが、その一因として、大人になってから大学等において学ぶ学生の割合が低く、社外学習や自己啓発を行っていない社会人が諸外国と比べて突出して多いことが報告されている。社会の持続的な発展を支える観点からも、リカレント教育を通じて、複雑化・高度化する企業課題や産業ニーズに対応して自らの知識や技能をアップデートできる高度専門人材を育成していくというリスキリング的な視点も重要である。知識の集積や体系化された理論の中核的機関である大学・専門学校等の高等教育機関において、社会人が学びやすい教育プログラムが提供されるとともに、企業等において学びの成果が適切に評価され、キャリアアップが促進される好循環を作り出すことが求められる。また、就職・転職といった自らの意思による労働移動も含む選択肢の増加や、それに伴う社会経済的地位の向上が図られることも重要である。そのためには、学修歴や学修成果の可視化、学位と資格等との関係性の可視化、学ぶ意欲がある人への支援の充実などの環境整備が必要である。 ○その際、産学官で具体的な対応策に向けた対話・連携を図ることが不可欠である。産業界がSociety5.0において期待する資質として「主体性」、「チームワーク・リーダーシップ・協調性」、「実行力」、「学び続ける力」、能力として「課題設定・解決能力」、「論理的思考力」、「創造力」が挙げられており、こうした認識を共有しつつ、具体的なスキルアップにつながる教育プログラムを開発・提供していくことが求められる。
教育振興基本計画23 2025/02/27 Ⅱ.今後の教育政策に関する基本的な方針 ① グローバル化する社会の持続的な発展に向けて学び続ける人材の育成 (マルチステージの人生を生涯にわたって学び続ける学習者の育成) ○人生100年時代は、同一年齢での単線的な学びや進路選択を前提とした人生のモデルから、一人一人の学ぶ時期や進路が複線化する人生のマルチステージモデルへと転換することが予測されている。こうした社会の構造的な変化に対応するため、学校教育における学びの多様化とともに、社会人の学び直し(リカレント教育)をはじめとする生涯学習の必要性が高まっている。 職業に直結した学びのほかにも、ライフステージの変化(例えば結婚、出産、育児、介護、病気、退職など)に応じて生じる様々な悩みの中で、「人生を豊かにするための学び」や「他者との学びあい」を身近なものとすることが重要である。また、高齢者を年齢によって画一的に捉えることなく、第二の人生を生きる個人の意欲や能力を生かすエイジフリーな社会に対応した学習機会の確保も重要であり、国や地方公共団体等は個人が生涯にわたって学習する機会を得られるよう条件を整備する必要がある。 ○生涯学習社会を実現するためには、まず、生涯にわたって学び続ける学習者としての基盤を学校教育等において培うことが重要である。初等中等教育や高等教育において、学習内容を人生や社会の在り方と結び付けて深く理解することや、興味・関心を喚起する学びを提供することなどにより、学びを習慣化し、生涯にわたって能動的に学び続けるための態度を涵養することが重要である。また、地域における社会教育を通じて、地域のつながりの中で体験的に学び、地域における様々な活動に積極的・主体的に関わる意識を高め、それを生涯にわたって実践していくことが望ましい。さらに、公開講座や文化・スポーツ活動など、大学が有する地域における学びの拠点としての機能も重要である。 ○また、生涯学習の推進に当たっては、ICTの活用などによる柔軟な学習機会の一層の充実を図る必要がある。さらに、学校教育と社会教育が連携することも重要であり、コミュニティ・スクールと地域学校協働活動の一体的推進により、学校と地域住民が連携・協働することで、子供たちの学びの場を学校から地域社会に広げ、次世代の社会の担い手としての成長を支えていくことが求められる。
教育振興基本計画22 2025/02/26 Ⅱ.今後の教育政策に関する基本的な方針 ① グローバル化する社会の持続的な発展に向けて学び続ける人材の育成 (地域・産学官連携、職業教育) ○地域が持続的に発展していくためには、その地域への愛着・誇りを持ち、仕事を通じて経済的に自立し、地域の課題解決に主体的に参加する人材を育成することが必要である。また地域住民同士が相互につながり、かかわりあう関係を築いていくことが求められる。 ○社会経済の発展をけん引するイノベーションの創出や各地域における産業振興に向けて、学校と産業界が一体となって人材育成に取り組むことが一層重要となっている。経済産業省の「未来人材ビジョン」においては、今後重視される「問題発見力」「的確な予測」「革新性」等が求められる職種では労働需要が増加し、相対的に求められない職種では減少すると推計されており、産学官が対話をしつつ共に各地域や産業分野において求められる資質・能力を育てていく必要がある。 ○そのためには、学校を地域や社会に対して開いていくことが重要である。小中高等学校等においてコミュニティ・スクールや地域学校協働活動、探究活動、キャリア教育・職業教育等を通じ、地域や産業界などの声を聞くとともに、教育実践への協力を得ていくことが求められる。また、実践的・創造的な技術者の養成を行う高等専門学校における教育の充実、地域産業における中核的な役割を担う専門人材育成に向けた専修学校における職業教育の充実を図ることも重要である。大学においては、地域や産業界等と大学との連携強化や、地域ニーズを踏まえた教育プログラムの構築、大学教育の質に関する情報公表等を進めることが期待される。さらに、起業家教育(アントレプレナーシップ教育)をあらゆる学校段階で推進していくことや、機関の枠を超えた産業界等との連携により大学院教育を強化していくことが求められる。 ○学校と地域・産学官の連携を推進していくためには、人と人、組織と組織をつなぎ、広げていく機能が重要となる。そのためのコーディネーター人材の育成や、コンソーシアムによる組織間の連携が求められる。 ○大学のキャンパスは、高度で先進的な人材や設備が集積しており、地域における人材育成、イノベーション・産業振興のハブや脱炭素化等の様々な面で重要な役割を果たしていることから、大学における教育研究活動とその活動の場となるキャンパス環境の整備が一体となった共創拠点(イノベーション・コモンズ)化を推進していくことが重要である。
教育振興基本計画21 2025/02/25 Ⅱ.今後の教育政策に関する基本的な方針 ① グローバル化する社会の持続的な発展に向けて学び続ける人材の育成 (持続可能な社会の創り手の育成に貢献するESD(持続可能な開発のための教育)の推進) ○持続可能な開発のための目標(SDGs)の実現に貢献するESDは、現代社会における地球規模課題の諸課題を自らに関わる問題として主体的にとらえ、その解決に向けて自分で考え、行動する力を身に付けるとともに、新たな価値観や行動等の変容をもたらすための教育である。 ○ESDの推進はグローバル人材の育成にも資する取組であり、多くの児童生徒学生等がグローバルな環境を体験する機会を与えられることが求められる。 (多様な才能・能力を生かす教育) ○近年、海外において多様な才能を有する人物のアイデアにより非連続なイノベーションが創出され、企業価値や行政機能が高められた事例が注目されている。他方、我が国においては、これまで学校教育において一人一人の子供たちの多様な才能をどのように伸長していくのかという議論が十分行われてこなかった。子供たち一人一人の多様な才能・能力を埋もれさせず、その才能を伸ばしていくための教育を行っていくことは重要な課題である。これまでの同一年齢で同一内容を学習することを前提とした教育の在り方に過度にとらわれず、個々に最適な学びを提供するとともに、正解(知識)の暗記や画一的な教育による弊害を排し、同質ではなく異質なものとの融合こそがイノベーションを生み出すとの発想の下、多様な才能・能力を生かす教育を行っていくことが求められる。
教育振興基本計画20 2025/02/21 Ⅱ.今後の教育政策に関する基本的な方針 ① グローバル化する社会の持続的な発展に向けて学び続ける人材の育成 (グローバル人材育成) ○新型コロナウイルス感染症の感染拡大及び国際情勢の不安定化により、世界経済の停滞や国際的分断の進行の懸念が高まっている。こうした中で、グローバルな立場から社会の持続的な発展を生み出す人材として、地球規模の諸課題を自らに関わる問題として捉え、世界を舞台に国際的なルール形成をリードしたり、社会経済的な課題解決に参画したりするグローバル・リーダーや、グローバルな視点を持って地域社会の活性化を担う人材の育成を推進していく必要がある。また、グローバル競争が激化する中、世界の中で我が国が輝き続けるためには、世界で活躍するイノベーターやリーダー人材を育成していくことが求められる。 ○日本や外国の言語や文化を理解し、日本への愛着や誇りを持ちつつ、グローバルな視野で活躍するための資質・能力の育成が求められており、コロナ禍で激減した日本人学生・生徒の海外留学や、より若年段階からの国際的な交流活動の推進、外国人留学生の受入れ環境、大学等のグローバル化の基盤・ルールの整備、外国語教育の充実、外国人への教育の充実、国際理解教育の推進などを図っていく必要がある。 ○また、産学官をあげてグローバル人材を育成する取組の推進や、優れた外国人材の受入れを図る視点、外国につながる子供の持つ多様性を「長所・強み」として生かす視点、海外で学ぶ日本人の子供への教育を保障する在外教育施設の魅力を高める取組も重要である。あわせて、距離や場所、時間の制約を克服するデジタルの活用により様々な国際交流・教育プログラムの展開の可能性が生まれており、遠隔・オンラインとリアルを組み合わせた取組の推進が求められる。 ○その際、グローバル化に対応した教育システムの国際標準や平準化が今後進められることが予測される中で、日本の教育の位置付けを検討していくことが求められる。