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2025年 12月

保育の質の確保・向上11

2025/12/15

2.調査研究等により得られた主な知見

(2)日本における保育所保育の歩み及び子どもとその育ちの捉え方

(保育実践に携わる者としての保育観)

〇保育実践や保育所の運営に携わってきた立場の方々によって語られた内容を統合・整理した結果として、保育者の保育所保育や保育の仕事に携わるということに対する思い・考えと、それらの形成や変化に大きく関わり保育者としての成長を支える同僚・施設長との関係性や職場環境の重要性が示された。それぞれの語り手固有の経験に基づく内容であるため、必ずしも保育者の意識や経験に関する全容の把捉や一般化ができるものではないが、多くの経験を重ねてきた保育者たちによる語り全体を通して、保育所保育のありようを捉える上で、個々の保育者にとっての実体験が持つ意味を考慮することの意義が提示された。

〇保育者は、子どもとの出会いや、職場の同僚や保護者との関わりの中で、子どもを一人の人間として尊重することの大切さや保育の面白さを実感し、保育という仕事に自身の生きがいや役割、社会的な使命や価値を見出していく。一方でその過程では、「『母性』が求められる職業」、「ただ子守をするだけ」「子どもと『遊んで』いるだけ」といった、保育所保育への社会的な理解や認識の不足、保育の仕事への低い評価に対する葛藤や、自身の保育者としての力量に関する自信の喪失、人間関係やライフステージの変化に際しての家庭生活との両立など一人の人間としての悩み等、様々な困難にも直面する。多くの場合、それらを乗り越える上で特に大きな支えとなった存在として、職場の上司や先輩・同僚が挙げられた。

〇周囲の人との出会いや関わりに支えられて保育の仕事を続ける上での困難を乗り越える体験は、保育者としての成長やアイデンティティの形成につながる一つの転機ともなっていた。また、こうした体験を経てキャリアを重ね自身の専門性を高めようとしていく中で、保育所保育の社会的な発信や保育者の地位向上といったことも意識されるようになり、園全体や地域、さらにより広い範囲で保育の質の向上を進める主導的な立場を担うようになる姿も見られた。

保育の質の確保・向上10

2025/12/12

2.調査研究等により得られた主な知見

(2)日本における保育所保育の歩み及び子どもとその育ちの捉え方

(保育所保育の営みの持つ特徴)

個別性/応答性:保育の現場では、一人一人の意思や人格を尊重するという根幹的な理念が、実際の子どもとの関わり合いを通じて保育者自身の子どもや保育に対する思いにもつながっている。また、発達の個人差が特に大きい乳幼児期に、多様な子どもが集団で日々生活を共にし、育ち合う場として、保育者には個に応じた関わりや配慮が求められる。その上で、保育者が子どもの理解に基づく見通しや意図を持ちながら、子どもの体験が主体的・自発的なものとなるよう、応答的に保育が展開されていくことが重視される。現場の実践において、保育は保育者と子どもが共につくっていくものであるという理解を広く共有していくことの重要性が改めて示された。

連続性:保育所保育と子どもの育ちを、一日の生活や日々の経験、生涯にわたる発達、時代など様々な時間軸における連続性や、家庭と保育所・地域・社会といった子どもの暮らしとそれを取りまく場全体の面的なつながりの中に位置づけて捉えることにより、現代における保育所保育の多層的な意義や重要性とともに、環境が大きく変わる移行期の保育や家庭との連携及び子育て支援など、今後さらに検討が必要になると考えられる課題が示唆された。子どもとともに保育所も様々な関係の網の目の中にあり、社会全体で急速かつ大きな変容が進む中で、常に理念に立ち戻りつつも、現状と実態に即して保育所保育の実践のありようを考えていくことの必要性が指摘された。

 

保育の質の確保・向上9

2025/12/11

2.調査研究等により得られた主な知見

(2)日本における保育所保育の歩み及び子どもとその育ちの捉え方

(保育所保育の営みの持つ特徴)

〇子どもを中心に置き、現場における保育実践の中で生じる様々な相互作用、保育所と家庭・地域・社会の関わり、さらにこれらの時間的経過を俯瞰的に捉えた上で、保育所保育の営みが持つ特徴や課題とされること等に関する議論の内容を検討した結果、「総合性・一体性」「個別性・応答性」「連続性」の3つの視点を切り口として、以下のように整理された。

〇総合性/一体性:保育所保育においては、乳幼児期の子どもとその発達の特性に基づき、子どもへの援助や保育の環境、子どもの経験、育みたい資質・能力などを、いずれも実践場面では様々な要素が分かちがたく結びついて成り立つものとして捉え、保育が行われている。特に「養護と教育の一体性」は、保育所保育の特性として、保育所の制度的な位置づけに関する議論とも連動する形で早くから議論が重ねられ、今日多くの保育関係者に自明のこととして受け止められている。一方で、こうした総合性・一体性に基づく保育の具体的な実践に関しては、それをどのように意識化・言語化するかということとあわせて模索が続くとともに、現場によっては未だ理解の不足や混乱が見られる場合もあるなど、現状においても課題があることが指摘された。

保育の質の確保・向上8

2025/12/10

2.調査研究等により得られた主な知見

(2)日本における保育所保育の歩み及び子どもとその育ちの捉え方

(保育所保育の基本的な考え方の基盤と背景)

〇こうした乳幼児期の発達の特性とその後の学びや生活へのつながりを踏まえ、保育において子どもの発達をどのように支え促していくかということについては、幼児教育のあり方をめぐる議論と重なるところが大きい。我が国における幼児教育の文脈では、子どもの自発性を尊重することと保育者の教育的な意図を実現することの関係を一つの主軸として議論が重ねられてきた。「環境を通して行う」ことなど幼児期の教育が持つ特色に関して、現場の中でも、また家庭や社会、小学校に対しても、どのように理解を共有し具体的な実践や小学校教育との接続等を考えていけばよいのか、様々な検討や取組が行われてきた経緯がある。

〇これらの理念・思想や研究の進展を踏まえた子どもとその育ちを捉える視点は、保育所保育指針の策定及び各改訂(定)時に記載内容へ反映されてきた。同時に、保育所保育指針の変遷からは、時代とともに社会全体と家庭の生活の中で生じる様々な課題やニーズに応じて、保育所に求められる役割や機能が拡大・変容してきたことも読み取ることができる。保育所保育指針の策定及び改訂(定)の経緯を通して、保育所保育が社会や家庭との関係の中で常にそのありようを問われ続けているものであることが改めて示された。

保育の質の確保・向上7

2025/12/09

2.調査研究等により得られた主な知見

(2)日本における保育所保育の歩み及び子どもとその育ちの捉え方

(保育所保育の基本的な考え方の基盤と背景)

〇保育所においては、児童福祉施設としての理念と使命のもと、乳幼児期の子どもが日々生活する場として、その心身の健全な発達を図る目的から、発達研究の理論・知見や幼児教育の考え方も踏まえ保育が行われている。これら保育所保育と深い結びつきをもつ児童福祉、発達研究、幼児教育の各領域における子どもとその育ちの捉え方には、時代とともに新たな視点が加わったり転換が図られたりしてきた。

〇児童福祉の観点では、今日、子どもは単に大人によって保護されるべき対象としてではなく権利の主体として捉えられている。1994(平成6)年に批准された児童の権利に関する条約の精神に則り、我が国における児童福祉の理念として、全ての子どもは適切な養育を受けることや健やかな育ちと自立が図られること等を等しく保障される権利を有する存在とされ、その福祉については子どもの最善の利益を優先して考慮し、保護者と共に社会全体で支えていくことが求められている。

〇また近年、人の発達について遺伝的影響など生物学的・医学的基盤に関する科学的な解明が進む一方で、発達を捉える理論的な枠組みにおいては、個人の能力の発現や変化にのみ着目するのではなく、個人の生得的要因とその人を取り巻く対人的・物理的・社会文化的環境とが相互的・複層的に様々な影響を及ぼし合う中で成り立つものとして見ることに重点が置かれている。発達の道筋についても、膨大な要因が複雑に影響し合い変容が生じる過程の全体に目を向けることで、ある程度の範囲では方向性や順序性を共有しつつも、人それぞれに相当な多様性があるものとして捉えられるようになっている。

〇さらに、発達研究の進展により、乳幼児期の発達において身近な他者との愛着関係が極めて重要であること、社会情動的な側面や認知的な側面など発達の各側面が密接に関係しており、特に子どもは人との日常的な関わりや遊びの中で学ぶことが非常に多いという特徴があることなどに関して、実証的な知見が蓄積されてきた。

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