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2026年 7月

子どもの成長90

2026/07/17

小学校の授業でのワークショップ開催

この背景を踏まえ、「よわいはつよいプロジェクト」が小学校の体育(保健領域)におけるメンタルヘルス教育に参加する試みが企画された。企画会議では、小学校の図画工作の授業を担当し、画家でもある教師が「絵を描くことで生徒が自身の心の状態を表現できる」というアイデアを提案。この手法は複数の研究で有用性が示されており、アートを活用したメンタルヘルス教育ワークショップが開催されることとなった。対象は小学校5年生である。

事前の準備

ワークショップに向けて、ラグビー選手にはメンタルヘルスの専門家によるトレーニングセッションが実施された。アスリートが個人的な経験を構造的に表現できるよう支援した。

このワークショップでは、「子どもたちの非言語表現の促進」、「アスリートとの社会的接触の促進」、「協力的な学習環境の醸成」という変化が期待された。

ワークショップの内容

ワークショップは通常の授業時間4時限内で実施された。主な内容は、以下の通りであった。

1) アイスブレーカー(15分):ラグビーパスとタックルの実演と体験

2) エリートアスリートによる講演(15分):「よわいはつよいプロジェクト」の理念、メンタルヘルス経験の共有、助けを求めることの重要性

3) ストレスとパフォーマンスの関係を学ぶ体験活動(15分):ストレスを可視化し、負荷の影響を理解する

4) アートを用いた活動(75分):メンタルヘルスの状態を色と形で表現し、仲間と共有

ワークショップ後のフィードバック

ワークショップの主な成果は以下の3点にまとめられる。

1) アスリートからメンタルヘルスについて学ぶ

2) 芸術的表現を通じてメンタルヘルスの状態や感情を明確に表現する

3) 他者のメンタルヘルスに関心を持ち、サポートする意識を育む

実際に参加した生徒の多くは肯定的な感想を述べ、否定的な反応はみられなかった。とくに、「アスリートからメンタルヘルスについて学ぶ」という点に関しては、多くの生徒がアスリートの個人的な経験談に興味を示した。「堂々とした逞しいアスリートと対話し、実際に彼らの存在に触れることで、不安や心配といった心の状態を否定せずに受け入れられるようになった」、「不安や悩みを他者と共有することは恥ずかしいことではないと感じた」といった意見が寄せられた。また、複数の生徒が「絵を描くことで徐々に心が落ち着き、他者に感情を表現する力や、仲間の感情を理解する力が向上した」と報告をした。さらに、助けを求めることと、他者を助けることの両方が大切だとの気づいた」といったコメントも多くみられた。

加えて「ラグビー選手がとても背が高くて大きいことに驚いた」「ラグビーをやってみたい」といった感想もあった。これらはワークショップの直接的な目的とは異なるものの、生徒たちが積極的に関与し、アスリートとの信頼関係を築いたことを示していると考えられる。

 

子どもの成長89

2026/07/16

アスリートのメンタルヘルス

一般的にアスリートは、強靭な肉体と精神力を兼ね備えた規範的存在と見なされがちである。しかし実際には、エリートアスリートも一般の人々と同様に、あるいはそれ以上にメンタルヘルスの問題に直面することが報告されている。とくにアスリートの場合、メンタルヘルスの上の課題を抱えていることが「弱さ」と見なされ、キャリアに影響を及ぼすことを懸念し、問題を隠そうとする傾向が強い。

このような課題を解決するために、著者らの研究グループと日本ラグビーフットボール選手会は、2019年に「よわいはつよいプロジェクト」を立ち上げ、アスリートやサポートスタッフに向けたメンタルヘルス啓発活動を展開してきている。

子どもの成長88

2026/07/15

子どものメンタルヘルス教育にアスリートの経験を活用 「よわいはつよいプロジェクト」の挑戦

メンタルヘルスの課題に直面した際に、助けを求めたり、自分の心の様子を人に伝える“強さ”を育む教育に、アスリートの経験が役立つ可能性を示唆する研究結果が報告された。小学校の授業で、5年生の生徒とラグビー選手がアート作品を共同制作することで、子どもたちに前向きな変化が見られたという。これは、日本ラグビーフットボール選手会と研究者による「よわいはつよいプロジェクト」の一環として実施された研究であり、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の小塩靖崇氏らによる論文が「Discover Mental Health」に掲載された。

学習指導要領の改訂に伴う子どもたちのメンタルヘルスリテラシー教育の課題

思春期のメンタルヘルス

思春期のメンタルヘルスは世界的に公衆衛生上の懸念とされている。国内では自殺者数は近年減少傾向にあるものの、10代の若者の自殺者数は大きな変化が見られず、むしろ微増しており、依然としてこの世代の死因のトップを占めている。メンタルヘルスの問題に直面したとき、多くの人が他者に相談したり助けを求めたりすることをためらう傾向があるが、特に若年層は、自力で問題を解決しようとする傾向が強いことが報告されている。

こうした現状を受け、世界各国で学校カリキュラムにストレス対処法や助けを求める重要性など、メンタルヘルスリテラシー教育を取り入れる動きが進んでいる。日本でも2020~22年に学習指導要領が改訂され、体育(保健領域)や保健体育の授業でメンタルヘルス教育が導入された。この教育では、知識の伝達だけでなく、体験的・実践的なアプローチが効果的とされ、音楽、ダンス、演劇、アートなどの創造的な活動が、スティグマ(社会的烙印)の軽減に寄与することが報告されている。

 

子どもの成長87

2026/07/14

完璧主義の追究は睡眠の質と関連がないが、完璧主義に伴う懸念は睡眠の質の低下と関連

研究の解析対象は、中国国内のさまざまな競技のアスリート、計208人。年齢は19.9±2.52歳で、女性が62.0%を占め、22.6%が団体競技、31.3%が個人競技、46.1%は団体競技と個人競技の双方を行っていた。競技レベルは、中国における2級(中国国家体育総局によるカテゴリー分類。バスケットボールを例にとると、全国ユース大会で4位以上に入ったことのあるチームでプレー)が24.5%、1級(全国大会で4位以上に入ったことのあるチーム)が55.8%、国際大会参加レベルが19.7%。

研究参加者の完璧主義傾向については、四つのカテゴリーに分かれた計25項目の質問から判断した。質問項目は、例えば、「できる限り完璧であろうと努力する」、「すべてが完璧にいかないと非常にストレスを感じる」、「スポーツに関して非常に高い目標を持っている」、「競技中にミスをした場合、人々は私を軽蔑するだろう」など。また「完璧さの追究」と「不完全であることの否定的反応」についても評価した。

精神的な強靭さの評価には、先行研究で妥当性が検証済みの質問票(Mental Toughness Inventory;MTI)を用いた。睡眠の質の評価には、ピッツバーグ睡眠質問票(Pittsburgh Sleep Quality Index;PSQI)を用いた。

完璧主義に伴う懸念が睡眠の質の低さと関連し、精神的強靭さは睡眠の質の高さと関連

得られた変数の相関関係を分析した結果、完璧主義の追究は、直接的には睡眠の質との有意な関連が認められなかったが(r=0.092)、完璧主義に伴う懸念(r=0.549、p<0.01)や精神的強靭さ(r=0.161、p<0.05)と有意な正の相関が認められた。また、完璧主義に伴う懸念は、精神的強靭さ(r=-0.276、p<0.01)と有意な負の相関が認められ、かつ、睡眠の質(r=-0.292、p<0.01)と有意な負の相関が認められた。一方、精神的強靭さは、睡眠の質と正の有意な相関が認められた(r=0.333、p<0.01)。

精神的強靭さは、完璧主義に伴う懸念と睡眠の質の低下との関連を抑制する

次に、構造方程式モデリングに基づくパス解析によって、完璧主義に伴う懸念と睡眠の質との関連に及ぼす精神的強靭さの媒介効果を検討した。

その結果、完璧主義に伴う懸念は、睡眠の質の低下と直接関連し(係数-0.22、p<0.05)、また精神的強靭さの低さと関連していた(係数-0.34、p<0.01)。一方、精神的に強靭であることは睡眠の質の高さと関連していた(係数0.29、p<0.01)。ただし、精神的強靭さの媒介は、完璧主義に伴う懸念と睡眠の低さとの関連を完全には補正できず、有意性が残されていた(係数-0.10、p<0.001)。

睡眠の質を第一に考えるなら、完璧主義ではないほうがよい可能性

以上より著者らは、当初の仮説の(1)は部分的に支持され、(2)は完全に支持され、(3)は完全には支持されなかったとし、結論を「アスリートの完璧主義は睡眠の質に悪影響を及ぼす可能性があり、精神的強靭さはその関係を部分的に媒介すると考えられる。ただし、スリートの完璧主義の追究と睡眠の質との間には有意な関連はなかった。この結果は、アスリートが睡眠の質を高めようとする場合、精神的強靭性を高め、完璧主義的な傾向を避けることが役立つ可能性を示唆している」と総括している。

子どもの成長86

2026/07/13

完璧主義のアスリートは睡眠の質が悪い? 精神的な強靭さにより改善する可能性も

アスリートの睡眠の質が、完璧主義であることによって低下するとする研究結果が報告された。ただし、精神的な強靭さを兼ね備えている場合は、完璧主義であることによる睡眠の質への影響がやや抑制されることも示されている。中国の若年アスリート対象研究の報告。

アスリートの睡眠問題

近年、アスリートの睡眠の重要性はますます注目されるようになってきている。回復の促進、それによるトレーニング効果の向上、怪我のリスクの抑制、競技での集中力の発揮などに、睡眠が深くかかわっているとするエビデンスが増加している。ただ、睡眠の質をどのように高められるのかという点については、いまだよくわかっていない。

一方、さまざまな健康問題のリスクを個人の性格に関連付けて理解しようとする研究も多く行われており、重要な性格特性の一つとして完璧主義がしばしば指摘されている。完璧主義は、過度に高い目標を設定し、それが満たされない場合に過剰な自己批判を行うことを特徴として、このような性格特性が睡眠の質にも影響を及ぼすことが報告されている。また、アスリートの完璧主義は、精神的な強靭さを伴わない場合、抑うつやバーンアウト(燃え尽き症候群)と関連し、ときにパフォーマンス低下にもつながることも示唆されている。

他方、精神的に強靭であることは一般的に、逆境においても努力を継続しパフォーマンスの維持に働くと考えられている。いくつかの研究報告は、精神的強靭性と睡眠の質の関連を検討し、精神的強靭性が高いと自分自身の感情の変化を適切にコントロールできることから睡眠の質を改善できるという主張がみられる。またアスリートにおいて、精神的強靭性が低い場合は、期待した結果を得られなかったりミスを生んでしまった場合などに、否定的なフィードバックをしがちで不安レベルが高まるという報告もある。

これらの知見を背景として、本論文の著者らは、以下の三つの仮説の下、若年アスリートの睡眠と性格特性に関する研究を行った。三つの仮説とは、(1)完璧主義を追い求めることは、アスリートの睡眠の質の高さに関連している一方で、完璧主義に伴う懸念をもつことは睡眠の質の低さに関連している、(2)精神的な強靭さはアスリートの睡眠の質の高さに関連している、(3)精神的な強靭さはアスリートの完璧主義と睡眠の質との関連を媒介する――というもの。

 

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