教育振興基本計画11 2025/02/07 Ⅰ.我が国の教育をめぐる現状・課題・展望 (4)教育政策に関する国内外の動向 ○第3期計画期間中には、中央教育審議会において、「学校における働き方改革」答申、「令和の日本型学校教育」答申、「高等教育のグランドデザイン」答申、「第3次学校安全の推進に関する計画の策定」答申、「「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等の在り方」答申が示された。また、生涯学習分科会、初等中等教育分科会、大学分科会において、各政策分野の審議まとめ等が取りまとめられるとともに、文部科学省に設置された各種の有識者会議において教育政策に係る提言がなされた。 ○また、教育未来創造会議第一次提言及び第二次提言、総合科学技術・イノベーション会議の教育・人材育成に関する政策パッケージ、経済産業省の未来人材ビジョンなど、関係省庁においても、教育政策に関する議論・提言が行われている。 ○国外では、経済協力開発機構(OECD)において、2030年の教育を見据えた「ラーニング・コンパス2030(学びの羅針盤2030)」が示されるとともに、ユネスコでは「教育の未来」グローバルレポートが取りまとめられている。
教育振興基本計画10 2025/02/06 Ⅰ.我が国の教育をめぐる現状・課題・展望 (3)社会の現状や変化への対応と今後の展望 ○成年年齢や選挙権年齢が18歳に引き下げられ、若者の自己決定権の尊重や積極的な社会参画が図られるとともに、こども基本法及びこども家庭庁設置法が成立し、子供の権利利益の擁護及び意見表明などについて規定されたことを踏まえた対応が必要である。 ○また、予測できない未来に向けて自らが社会を創り出していくという視点からは、「持続可能な社会の創り手」という学習指導要領前文に定められた目指すべき姿を実現することが求められる。その際、教育基本法の理念・目的・目標について規定されている普遍的価値を共有した上で、主体的な社会の創り手となる考え方が重要である。 ○今後目指すべき未来社会像として、第6期科学技術・イノベーション基本計画において、持続可能性と強靱性を備え、国民の安全と安心を確保するとともに、一人一人が多様な幸せを実現できる、人間中心の社会としての「Society5.0(超スマート社会)」が示されている。 ○これら社会の現状や変化を踏まえて2040年以降の社会を展望したとき、教育こそが、社会をけん引する駆動力の中核を担う営みであり、人間中心の社会を支えるシステムとなる時代が到来していると言えよう。将来の予測が困難な時代において、一人一人の豊かで幸せな人生と社会の持続的な発展を実現するために、教育の果たす役割はますます大きくなっている。 ○こうした認識の下、目指すべき社会像の中での教育の在り方を本計画において示すものである。
教育振興基本計画9 2025/02/05 Ⅰ.我が国の教育をめぐる現状・課題・展望 (3)社会の現状や変化への対応と今後の展望 ○経済先進諸国においては、経済的な豊かさのみならず、精神的な豊かさや健康までを含めて幸福や生きがいを捉える「ウェルビーイング(Well-being)」の考え方が重視されてきており、経済協力開発機構(OECD)の「ラーニング・コンパス2030(学びの羅針盤2030)」では、個人と社会のウェルビーイングは「私たちの望む未来(Future We Want)」であり、社会のウェルビーイングは共通の「目的地」とされている。 ○社会の多様化が進む中、障害の有無や年齢、文化的・言語的背景、家庭環境などにかかわらず、誰一人取り残されることなく、誰もが生き生きとした人生を享受することのできる共生社会の実現を目指し、その実現に向けた社会的包摂を推進する必要がある。
教育振興基本計画8 2025/02/04 Ⅰ.我が国の教育をめぐる現状・課題・展望 (3)社会の現状や変化への対応と今後の展望 ○予測できる社会の変化としてはまず、人口減少が挙げられ、現在の生産年齢人口である15~64歳の人口は、2050年には現在の2/3に減少すると推計されている。我が国の労働生産性は国際的に見て低く、このままでは社会経済の活力や水準の維持が危ぶまれる状況にある。また、人口減少・高齢化は特に地方において深刻であり、地方創生の観点からの対応も必要である。加えて、長寿化が進展する中での対応も求められる。 ○デジタルトランスフォーメーションや地球温暖化と関連して、デジタル人材やグリーン(脱炭素)人材が不足するとの予測がある。また、AIやロボットの発達により、特定の職種では雇用が減少し、今後は問題発見力や的確な予測、革新性といった能力が一層求められることが予測されており、労働市場の在り方や働く人に必要とされるスキルが今後変容していくことが見通される。特に生成AIは人々の暮らしや社会に大きな変革をもたらす可能性があることが指摘されている。
教育振興基本計画7 2025/02/03 Ⅰ.我が国の教育をめぐる現状・課題・展望 (3)社会の現状や変化への対応と今後の展望 ○現代は将来の予測が困難な時代であり、その特徴である変動性、不確実性、複雑性、曖昧性の頭文字を取って「VUCA」の時代とも言われている。これまでの3回にわたる計画の中で、少子化・人口減少や高齢化、グローバル化の進展と国際的な地位の低下、地球規模の課題、子供の貧困、格差の固定化と再生産、地域間格差、社会のつながりの希薄化などは、社会の課題として継続的に掲げられてきた。こうした中、第3期計画期間中に発生した新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響及びロシアのウクライナ侵略による国際情勢の不安定化は、正に予測困難な時代を象徴する事態であったと言えよう。このような危機に対応する強靭さ(レジリエンス)を備えた社会をいかに構築していくかという観点はこれからの重要な課題である。 ○新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響としては、国際経済の停滞、グローバルな人的交流の減少、体験活動の機会の減少などの事態が生じた。また、学校の臨時休業により、学校の居場所やセーフティネットとしての福祉的役割を再認識するきっかけとなった。感染拡大当初はICTの活用が十分ではなく、デジタル化への対応の遅れが浮き彫りとなったが、これを契機として遠隔・オンライン教育が進展し、学びの変容がもたらされた。こうした社会状況もあいまって、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展は社会により良い変化をもたらす可能性のある変革として注目されている。 ○2040年以降の社会を見据えたとき、現時点で予測される社会の課題や変化に対応して人材を育成するという視点と、予測できない未来に向けて自らが社会を創り出していくという視点の双方が必要となる。