教育振興基本計画31 2025/03/11 Ⅱ.今後の教育政策に関する基本的な方針 ③地域や家庭で共に学び支え合う社会の実現に向けた教育の推進 (公民館等の社会教育施設の機能強化、社会教育人材の養成と活躍機会の拡充) ○デジタル田園都市国家構想基本方針においてデジタル技術を活用し、地域の特性を生かした地域の社会課題の解決・地域の魅力向上が提言される中、公民館や図書館等の社会教育施設は、社会教育の拠点として、自らが果たす役割を明確化することが求められている。それに当たっては、地域住民の意向を運営に取り入れることなどにより、機能強化を図ることが重要である。その際、貧困の状態にある子供、外国人、障害者やその家族、社会的に孤立しがちな若者や高齢者など、困難な立場に置かれている人々の社会的包摂の観点からの対応が求められる。 ○また、社会教育施設には、オンラインによる講座等の受講機会の拡充やデジタル教育の充実とともに、住民同士が対面によりつながりを持てる機会の充実も求められる。あわせて、学校施設との複合化や、文教施設を官民連携で整備することも、地域コミュニティの拠点を形成する上で重要である。 ○社会教育に対するニーズが高まる中、地域において社会教育活動を支える社会教育主事及び社会教育士の役割はその重要性を増している。都道府県・市町村における社会教育主事の配置促進や社会教育士の活躍機会の拡充に向けた取組を推進することが必要である。
教育振興基本計画30 2025/03/10 Ⅱ.今後の教育政策に関する基本的な方針 ③地域や家庭で共に学び支え合う社会の実現に向けた教育の推進 (社会教育を通じた持続的な地域コミュニティの基盤形成) ○社会教育は、地域住民が共に学ぶものであり、地域コミュニティ形成の営みという性格を強く有している。近年、防災、福祉、産業振興、文化交流など、広義のまちづくり・地域づくりに関する多様な行政分野において、その地域課題の解決に向けて、関係省庁が地域コミュニティに関する政策を提示している。これらの政策は地域コミュニティが維持されていてこそ機能するものであり、社会教育の役割が重要となる。 ○地域において人々の関係を共感的・協調的なものとするためには、社会教育による「学び」を通じて人々の「つながり」や「かかわり」を作り出し、協力し合える関係としての土壌を耕しておくことが求められる。こうして形成された地域の人々の関係は持続的な地域コミュニティの基盤となり、ひいては社会全体の基盤となる。「人づくり・つながりづくり・地域づくり」の循環が生み出されることにより、地域コミュニティにおける個人と地域全体のウェルビーイングの向上がもたらされる。地域で人と人とのつながりを作り、協調的な幸福感を紡ごうと取り組んでいる人たちが自信と誇りを持つことができるようにしていく必要がある。 ○このため、地域と学校をつなぐ地域学校協働活動推進員等のコーディネーターの育成とともに、前述したコミュニティ・スクールと地域学校協働活動の一体的推進など、社会教育の充実による地域の教育力の向上や地域コミュニティの基盤強化を図ることが求められる。
教育振興基本計画29 2025/03/07 Ⅱ.今後の教育政策に関する基本的な方針 ②誰一人取り残されず、全ての人の可能性を引き出す共生社会の実現に向けた教育の推進 (共生社会の実現に向けた教育の方向性) ○児童生徒に対する生徒指導は、学習指導と並んで、共生社会実現に向けた資質・能力の育成に重要な意義を有するものである。児童生徒が自発的・主体的に自らを発達させていくことが尊重され、その過程を学校や教職員が支えていくという発達支持的生徒指導を重視していくことが求められる。また、児童生徒が将来において社会的な自己実現ができるような資質・能力・態度を形成するように働きかけるための教育相談も、生徒指導と一体化させ、全教職員が一致して取組を進めることが求められる。 ○コロナ禍によりその機会が減少した様々な体験活動(自然体験活動、社会体験活動、文化芸術活動等)は、自己肯定感や協調性、主観的幸福感など、ウェルビーイングの向上に資するものであって、体験を通して他者と協働することにより共生社会の実現にもつながる意義を有するものであり、その機会の充実を図っていくことが求められる。また、児童生徒等の心身の健やかな育成に向けた学校保健、食育、スポーツ活動、豊かな感性を育む読書活動の推進も重要である。 ○あわせて、個人と社会のウェルビーイングの実現の観点からは、保護者や地域住民等が学校運営に当事者として参画するコミュニティ・スクールや、地域住民等の参画により地域と学校が連携・協働する地域学校協働活動を一体的に推進するとともに、地域の多様な人材を活用した家庭教育支援チームの活動を推進していくことが効果的である。高等教育段階では地域連携プラットフォームなどの枠組みを活用することにより、大学と地域との協働を進めていくことが求められる。学び手、学校、保護者・地域住民等が「三方よし」となり、それぞれのウェルビーイングが高まるよう三者が一体となって取組を推進することが求められる。
教育振興基本計画28 2025/03/06 Ⅱ.今後の教育政策に関する基本的な方針 ②誰一人取り残されず、全ての人の可能性を引き出す共生社会の実現に向けた教育の推進 (共生社会の実現に向けた教育の方向性) ○「令和の日本型学校教育」答申で提言された「個別最適な学びと協働的な学びの一体的充実」は、多様な子供の状況に応じた学びを進めるとともに、多様な他者と学び合う機会を確保するものであり、共生社会の実現に向けて必要不可欠な教育政策の方向性である。また、障害者の権利に関する条約に基づくインクルーシブ教育システムを推進していくことも重要である。高等教育においては、グランドデザイン答申をはじめとする累次の答申・審議まとめ等において、多様な価値観を持つ多様な人材が集まるキャンパスにおいて、一人一人の学生の学修意欲を喚起し、学修者本位の教育を提供していく方向性が示されている。こうした目指すべき教育の方向性を共生社会の実現という観点から改めて捉え直し、教育に携わる者が共有した上で、日常の教育の営みの中に取り込んでいかなければならない。 ○その際、第3期計画期間中に飛躍的に整備されたICT環境を効果的に活用していく必要がある。GIGAスクール構想による1人1台端末や高速通信ネットワーク環境の整備などにより、距離や場所、時間の制約が取り払われ、様々な国や地域との交流が容易になるとともに、へき地における教育環境の充実や、登校できない子供の学びや交流の機会の充実が可能となっている。また、デジタルの特性を生かした障害のある子供や外国人児童生徒等のアクセシビリティの向上も期待される。ICTを活用した新たな取組の実践を通じて、一人一人の状況やニーズに応じたより良い教育環境を目指していく必要がある。
教育振興基本計画27 2025/03/05 Ⅱ.今後の教育政策に関する基本的な方針 ②誰一人取り残されず、全ての人の可能性を引き出す共生社会の実現に向けた教育の推進 (共生社会の実現に向けた教育の考え方) ○これまで学校では「みんなで同じことを、同じように」することを過度に要求され、「同調圧力」を感じる子供が増えてきたことが指摘されている。異なる立場や考え、価値観を持った人々同士が、お互いの組織や集団の境界を越えて混ざり合い、学び合うことは、「同調圧力」への偏りから脱却する上で重要であり、学校のみならず社会全体で重視していくべき方向性である。また、そのことを可能にするための土壌として、「風通しの良い」組織・集団であることが大切である。そのためには、子供のみならず大人も含めて、多様性を受け入れる寛容で成熟した存在となることが必要である。加えて、これまでの同一年齢で同一内容を学習することを前提とした教育の在り方に過度にとらわれず、日本型学校教育の優れた蓄積も生かして、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実していくことも重要である。 ○こうしたことを通じて、一人一人が自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重する共生社会を実現していくことが求められる。また、組織や集団における多様性の尊重は、イノベーション創出にもつながる重要な考え方である。 Paper People Standing in a Circle and One Red Paper Man Inside