子どもの成長153 2026/10/22 米国では学校給食の無償化により子どもたちの高血圧が減少 栄養バランスの改善とBMI低下が関与 学校給食の無償化が、子どもたちの高血圧を減らす可能性を示唆するデータが米国から報告された。無償化を導入した学校では、血圧高値に該当する生徒が5年間で11%近く減ったと推算されるという。ワシントン大学などの研究者らの研究結果で、米国医師会のジャーナル「JAMA Network Open」に論文が掲載された。 米国では学校給食の無償化が進められ、献立もDASH食に近づいた 小児期の血圧高値は成人後の高血圧リスクとなり、心血管疾患・腎疾患リスクを生涯にわたって押し上げる可能性がある。血圧管理に推奨される非薬物療法として、減塩を中心とする食習慣の改善が重要であり、米国など海外では、果物、野菜、低脂肪乳製品を多く摂取し、ナトリウム、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸を控えるという「DASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)」食のエビデンスが蓄積されてきている。ただし、このDASH食を広く普及させるための公衆衛生対策は定着していない。 一方、米国では2010年に学校給食に対する栄養要件が強化され、米農務省および保健福祉省の「米国人のための食生活指針」に則した給食を提供することが義務付けられた。また、低所得世帯の子どもが多くを占める学校の給食を無償化する政策も推し進められ、公立学校の多くが無償化プログラムを導入してきている。 今回取り上げる論文の著者らは、このような背景から、給食無償化プログラムを導入した学校の生徒は高血圧リスクが低下しているのではないかと考え、以下の検討を行った。
子どもの成長152 2026/10/21 研究の背景と目的:日本人女性の乳児期の体重変化は成長後の体重に影響するのか 成人期の肥満・やせは、心血管疾患や妊娠合併症などの将来的な健康リスクと関連することが知られている。さらに妊娠前の肥満・やせは、母体のみならず子どもの予後にも影響を与えることが知られている。これは「DOHaD(Developmental Origins of Health and Disease)」という、発育初期の栄養環境が将来の健康に影響を及ぼすとされる概念に基づいている。 DoHADは、胎児期に母体から供給される栄養の不足や過剰が、子どもにどのような影響を及ぼすのかを長期的に検討する考え方で、近年ではこの概念が拡大し、出生後~乳幼児期(1~2歳)までの体重増加量と、その後の肥満・やせとの関連にも関心が寄せられている。 これまで、日本人女性を対象に出生直後から乳児期早期(生後1~6カ月)の体重増加量と成人期の体重との関連に着目した研究はなかった。そこで今回の研究では、母子健康手帳に記載されているデータを利用して、出生体重や乳児期の体重増加量が成人期の肥満・やせに与える影響を調査した。 研究の方法:妊婦の母子健康手帳に記録されていた体重と現在の体重の関係を検討 2017年4月~2021年12月に同センターへ通院し、研究参加と母子健康手帳のデータ提供に同意した1,501人のうち、妊娠前体重データがそろっていた1,441人を対象とした。対象者には、出生体重、生後1・3・6カ月の体重、授乳方法などの情報が記載された自身の母子健康手帳を持参してもらい、データを収集した。 生後1・3・6カ月時の体重増加量を5カテゴリーに分類(人数で均等割)し、妊娠前の体重から、それぞれのカテゴリーの中で「やせ」と「肥満」になった人の割合を算出。乳児期の体重増加量と「やせ」「肥満」との関連を解析した(図5) 図5 研究対象とした情報 研究者コメント:乳児期の体重増加に基づく授乳・栄養の制限は慎重に 研究者らは、今回の研究結果について以下のように述べている。 「赤ちゃんの体重が大きく増えると『将来肥満になるのでは』と、ミルクをこのままの量であげていいのか心配なる母親もいるかもしれない。しかし今回の研究から、乳児期の体重増加が多くても将来の肥満の割合は上昇せず、むしろやせの割合は低下する可能性があることが明らかになった。乳児期の栄養環境は将来にわたって影響する。成長曲線のグラフの範囲よりも多く体重が増えているからといって、授乳や栄養摂取について安易に制限するのは慎重であるべきと考える」。
子どもの成長151 2026/10/20 「授乳や栄養摂取の制限は慎重にすべき」乳児期の体重増加は将来の肥満リスクと関連しない可能性 国立成育医療研究センター 生後6カ月までに体重が多く増加していても、将来において肥満(BMI25以上)になる割合は増加しないことを示すデータが報告された。国立成育医療研究センターの研究グループの成果であり、「Journal of Developmental Origins of Health and Disease」に論文が掲載されるとともに、プレスリリースが発行された。 研究の概要:生後6カ月の体重増加は成人後の肥満と関連がない 国立成育医療研究センターの研究グループは、母子健康手帳の情報を用いたコホート研究により、「乳児期の体重増加」が「成人期の肥満」の割合にどのような影響を与えるのかについて検討した。その結果、生後6カ月までに体重が多く増加していても、将来において肥満(BMI≧25)になる割合が増加しないことを明らかにした。一方で、成人期における‘やせ’(BMI<18.5)の割合は低下していた(図1〜図4)。 図1 出生体重別から見た「やせ」・「肥満」の割合 図2 生後3カ月までの体重増加から見た「やせ」・「肥満」の割合 図3 生後1カ月までの体重増加から見た「やせ」・「肥満」の割合 図4 生後6カ月までの体重増加から見た「やせ」・「肥満」の割合 母子健康手帳に掲載されている成長曲線よりも多く体重が増えていると、将来肥満になるかもしれないと不安に思う保護者は多いかもしれないが、体重増加だけを理由に授乳量を制限しなくてもよい可能性が示唆された。 本研究は、同センターを受診した1,441人の妊婦を対象としている。その妊婦が赤ちゃんだった頃(過去)の体重増加を当時の母子健康手帳に記録されたデータから調べ、出生から生後6カ月までの体重増加と、妊娠前(現在)のBMIを比較し、分析した。 明らかになった主なポイントは以下のとおり。 研究のポイント 乳児期に体重が多く増加しても、成人期に肥満になる割合は上昇していない。生後6カ月時点で体重増加が大きかった上位20%の群(5,230~7,700g)でも、妊娠前の肥満との関連はない。 一方で、乳児期に体重が多く増加すると、成人期のやせの割合は低下。生後6カ月の時点で体重増加が大きかった上位20%の群(5,230~7,700g)では、妊娠前にやせになる割合が低下していた。十分な体重増加が、将来のやせを予防する可能性が示唆された。 ただし、生後1・3カ月時点での体重増加量は、妊娠前の肥満・やせの割合に関連がなかった。 授乳や栄養摂取が適正かどうかを判断する際、乳児期の体重増加量だけを根拠に、安易に授乳量の制限をすべきではない可能性が示唆された。 母子健康手帳に記載されている成長曲線は、赤ちゃんの発育を評価するための目安。必ずそのとおりに発育していないといけないわけではなく、乳幼児健診で医師や保健師などに見てもらうべき。
子どもの成長150 2026/10/19 「朝食を抜く」「夜遅い夕食」は骨粗鬆症性骨折リスクを高める可能性 食習慣と骨折の関連を調査 奈良県立医科大学 朝食抜きと遅い夕食の習慣が、骨粗鬆症性骨折リスクの上昇と関連していることが、初めて明らかにされた。奈良県立医科大学の研究グループの研究結果であり、「Journal of the Endocrine Society」に論文が掲載されるとともに、プレスリリースが発行された。 研究の背景:食習慣は骨粗鬆症による骨折リスクに関連があるのか? 骨粗鬆症による骨折は、とくに高齢者においてADL(日常生活動作)の低下を引き起こし、本人および家族のQOL(生活の質)を大きく損なう。寝たきりや施設への入所につながることもあり、生命予後にも影響を及ぼす。また、骨折による手術費、リハビリテーション費、そして介護費など、経済的負担も大きくなるため、骨粗鬆症を正しく診断・治療し、骨折を予防することは非常に大切。 骨粗鬆症の予防には、リスクの高い人を把握する必要がある。骨粗鬆症のリスクは、加齢、家族歴、薬剤に加え、さまざまな生活習慣がリスクとして関連している。これまで、喫煙、運動不足、睡眠不足が骨粗鬆症のリスクであり、食事のカルシウムやビタミンDの摂取不足の関連は言われていたが、いわゆる食習慣そのものに関する報告は限られていた。朝食抜きは骨密度の低下と関連する可能性があると報告されていたものの、実際の骨折リスクとの関連は不明だった。また夜遅い夕食に関しては、骨粗鬆症との関連を調べた研究自体が存在しなかった。 そこで今回の研究では、健康診断結果と紐づけられた日本の大規模なレセプトデータベース(病院や薬局が保険者へ請求する「診療明細(レセプト)」を匿名化して集めた巨大なデータベース)を活用し、生活習慣に関する問診に答えた人を対象に、「朝食抜き」「遅い夕食」という食習慣が骨粗鬆症性骨折に与える影響を調べた。 研究の成果:食習慣だけでなく、さまざまな生活習慣が骨折リスクに関連している 1,100万人の健診データが連結された日本の大規模レセプトデータベース(DeSCデータベース)を用いて、2014~22年に健康診断を受診し、骨粗鬆症の既往がない20歳以上の人を対象に解析を行った。生活習慣に関する情報は、健康診断時の問診票から取得し、朝食抜き(週3回以上朝食を抜いた)、遅い夕食(週3回以上、就寝2時間以内の夕食を摂る)に加えて、喫煙、運動、睡眠の質など、ほかの生活習慣もあわせて収集した。アウトカムは、レセプトデータに基づき、骨粗鬆症性骨折(大腿骨・橈骨遠位端・脊椎・上腕骨の骨折)の診断とした。 健康診断日を起点として、骨粗鬆症性骨折の発生または観察終了日までを追跡し、不健康な生活習慣の有無による骨折のリスクをCOX比例ハザードモデル※2により求めた。個々の生活習慣による独立したリスクを正確に計算するために、交絡因子となり得る既知の骨粗鬆症のリスクである、年齢や性別、ステロイド薬などの薬剤歴、関節リウマチ・糖尿病などの疾患の有無などで調整した。 対象者92万7,130人を、中央値2.6年追跡したところ、2万8,196人に骨粗鬆症性骨折が発生していた。骨折リスクについて、ほかのリスク因子を調整した後の骨折リスクハザード比(95%CI)は、朝食抜きが18%増加(調整ハザード比※3〈aHR〉1.18〈95%信頼区間※41.12~1.23〉)、遅い夕食が8%増加(aHR1.08〈1.04~1.12〉)を示した。その他の生活習慣では喫煙が11%増加(aHR1.11〈1.06~1.17〉)、運動習慣なしが9%増加(aHR1.09〈1.06~1.11〉)、不十分な睡眠が5%増加(aHR1.05〈1.02~1.07〉)と関連していた。さらに、朝食抜きと遅い夕食習慣をあわせ持つ人は、骨折リスクが23%増加(aHR1.23〈1.13~1.34〉)と、相加的にリスクが増加するという大きな影響が認められた。 とくに重要な点として、朝食を抜く習慣のある集団では、男性が多く、遅くに夕食を摂る、喫煙、運動不足、睡眠不良、体重増加傾向など、複数の不健康な生活習慣の集積が認められた。このことは、朝食抜きという習慣そのものよりも、その背景にある生活スタイルを明らかにして介入することの重要性を示唆している。例えば、働き盛りで忙しい男性では、朝食を摂る時間が確保できず、帰りが遅く夕食も遅くなりがちであることや、ストレスによって喫煙や飲酒量が増える可能性なども考慮する必要がある。 本研究の限界として、観察研究であることから因果関係を示すものではない点が挙げられる。生活習慣の改善によって本当に骨折を予防できるかどうかの証明には、前向きの介入研究が必要。一方で今回の結果は、肥満、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症などは生活習慣病として知られているが、骨粗鬆症も重要な生活習慣病の一つであることを明確に示している。骨の健康のためにも、健康的な食習慣とともに運動習慣、禁煙、お酒を飲み過ぎないなど総合的な指導が大切と言える。
子どもの成長149 2026/10/16 炭水化物の摂取量が少ない人は、45歳以下での骨粗鬆症性骨折が多い 低炭水化物食スコア(LCDS)の高さが骨粗鬆性骨折の既往と有意に関連 骨折リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、人種、BMI、摂取エネルギー量、乳製品摂取量、血清カルシウム・リン・25(OH)D、喫煙・飲酒・身体活動習慣、収入、教育歴、婚姻状況、高血圧・糖尿病・冠状動脈疾患・脳卒中の既往)を調整後、LCDSが1点高いごとに骨粗鬆性骨折の既往者が1.1%多いという有意な関連が認められた(OR1.0113〈95%CI;1.0015~1.0212〉)。 また、LCDSの四分位数で4群に分け、第1四分位群(摂取エネルギー量に占める炭水化物の量が少ない下位25%)を基準に比較すると、第4四分位群(摂取エネルギー量に占める炭水化物の量が多い上位25%)は、骨粗鬆性骨折の既往者が有意に多く(OR1.0695〈1.0058~1.1372〉)、LCDSが高い群ほど骨粗鬆性骨折の既往者が多いという有意な関連が認められた(傾向性p=0.0326)。 このほか、制限付き3次スプラインモデルの解析からは、LCDSと骨粗鬆性骨折との間に、線形の有意な関連が示された。 サブグループ解析では、45歳未満、習慣的飲酒者、高血圧でない人で有意 次に、年齢、性別、BMI、高血圧・糖尿病の有無、喫煙・飲酒・身体活動習慣、冠状動脈疾患・脳卒中の既往の有無で層別化したサブグループ解析を実施。その結果、年齢、飲酒習慣の有無、高血圧の既往の有無という3項目について、有意な交互作用が認められた。 具体的には、年齢については45歳未満でのみLCDSと骨粗鬆性骨折既往との関連が有意であり、45歳超は非有意だった(交互作用p=0.0110)。飲酒については習慣的飲酒者のみ関連が有意だった(交互作用p=0.0099)。また、高血圧でない集団でのみ関連が有意だった(交互作用p=0.0183)。その他の性別や糖尿病の有無などでは、結果に有意な違いは観察されなかった。 著者らは本研究が横断研究であること、骨折も含め既往症の有無を自己申告に基づき判断していることなどを限界点として挙げたうえで、「炭水化物摂取量の少なさと骨粗鬆性骨折の既往との間に有意な相関が認められた。45歳以下、習慣的飲酒者、高血圧のない人は、とくに注意が必要な可能性がある。ただし、サブグループ解析で観察された交互作用は仮説生成的なものとして解釈すべきだろう」と結論づけている。