子どもの成長45 2026/05/15 食事にかかる時間と食事の形態の関連を検証 肥満予防や栄養改善に応用できる可能性 藤田医科大学 食べ物の形態が、食事にかける時間、咀嚼回数、咀嚼テンポに影響することが明らかになった。藤田医科大学の研究グループの研究によるもので、「Nutrients」に論文が掲載されるとともに、大学のサイトにプレスリリースが掲載された。 研究の概要:食事にかける時間を意図的に変えるには? 肥満者に対する栄養指導として、ゆっくり食べるように勧めることが少なくない。しかし、どのような方法でゆっくり食べるかは、実は難しい問題。 藤田医科大学の研究グループは、食べ物の形態の違い(ファストフード〈ピザ〉、弁当〈ハンバーグ弁当〉)や野菜を食べる順番が、食事にかける時間に与える影響について研究を行った。その結果、食べ物の形態が食事時間、咀嚼回数、咀嚼テンポ(噛むスピード)に影響することを明らかにした。 肥満者は国を問わず、ファストフードの利用頻度が高い傾向がある。一口回数(口に入れる回数)や咀嚼回数を増やすだけでなく、食事の形態にも注目し、食事時間を延ばす工夫が必要。同じエネルギー量であれば、片手で食べられるような食事よりも、箸を使って食べる形式の食事(お弁当)を選ぶことで食事時間を長くすることができることもわかった。 研究成果のポイント ・著者らは先行研究で、ゆっくりとしたテンポを聴くと食事時間を延ばすことができること、食事時間は一口回数や咀嚼回数に関連することを報告している(Nutrients, 2025, 17, 962)。 ・今回は、食事の形態や野菜を食べる順番が食事時間に影響を与えるかを検討した。 ・同じカロリーの場合、ピザに比べハンバーグ弁当のほうが、食事時間、咀嚼回数が増加した。 ・ハンバーグ弁当で野菜から食べた場合、野菜を最後に食べた場合では食事時間、咀嚼回数、咀嚼テンポは変わらなかった。 ・年齢、性別、食事の形態に関係なく、食事時間は、咀嚼回数、咀嚼テンポと関連したが、BMIとは無関係であった。 ・肥満や栄養不良患者に対する個別化栄養指導への応用が期待される。
子どもの成長44 2026/05/14 「痩せていても食事を制限してしまう」 研究の成果:神経性やせ症における味覚処理異常を示唆する変化が明らかに 本研究では、国立精神・神経医療研究センターの監修のもと、千葉大学、東北大学、京都大学、産業医科大学、九州大学で2014~21年の間に収集された、神経性やせ症患者女性114名(制限型61名、過食排出型53名)※と、対照となる健常女性135名の大規模fMRIデータを解析対象とした。島皮質を機能に応じて分割した左右6領域を関心領域※とし、6領域と他の脳のすべての領域との間で安静時の機能的結合性を算出し、神経性やせ症群と健常群で比較検討した。 ※神経性やせ症の制限型/過食排出型:神経性やせ症は、過食や排出行動(自己誘発性嘔吐、下剤・利尿剤・浣腸剤の乱用)を行わない制限型と、過食や排出行動を繰り返す過食排出型の二つに分類される。 ※関心領域:Region of interest(ROI)。解析の対象として選択した部位のこと。 その結果、神経性やせ症群では健常群に比べ、食物の認知的処理に関わる島皮質前部背側と、情動中枢として知られる扁桃体間の機能的結合性が上昇していた(図1の赤色強調部)。一方、舌からの味覚信号を脳の中で最初に受け取る一次味覚野である、島皮質中部後背側と頭頂弁蓋部間の機能的結合性は低下していた(図1の水色強調部)。また、これらの結果より統計的な信頼性は低かったものの、島皮質前部背側と小脳片葉間の機能的結合性の低下、島皮質中部後背側と中心弁蓋部間の機能的結合性の低下も認められた。 図1 神経性やせ症で生じた機能的結合性の変化 さらに、神経性やせ症の制限型(図2上)と過食排出型(図2下)をそれぞれ分けて健常群と比較すると、島皮質中部後背側と頭頂弁蓋部間の機能的結合性の低下は過食排出型でより顕著であるなど(図2下の緑色強調部)、神経性やせ症の中でもタイプによって生じている脳機能に差があることが示唆された。 図2 神経性やせ症の制限型/過食排出型と健常群の個別比較結果 一方、神経症やせ症患者で生じている島皮質前部背側と扁桃体間の機能的結合性の上昇は味覚嫌悪学習、すなわちある食べ物を食べた後に不快な症状(腹痛など)を経験すると、その食べ物の味に対して嫌悪感を覚えるようになるプロセスが過剰に働いていることを示唆している。また、一次味覚野である島皮質中部後背側と頭頂弁蓋部間の機能的結合性の低下は、神経性やせ症では一次味覚処理の異常が生じており、同じ食物でも以前と味が違って感じられてしまっている可能性があることを示している。さらに、島皮質中部後背側と頭頂弁蓋部間の機能的結合性の低下が、一般的に制限型よりも病歴が長い過食排出型でより顕著だったという結果は、病状の長期化に伴い、異常を引き起こす神経学的な変化も徐々に進行してしまう可能性を示唆している。 今後の展望:味覚処理異常を考慮した臨床評価へ 本研究成果は神経性やせ症患者における悪循環を維持してしまう、「痩せているにも関わらず食事制限をやめられない」という行動のメカニズムにおける、味覚処理異常の重要性を強調するもの。今後は臨床現場においても、味覚処理異常が神経性やせ症の病態理解や臨床評価の一助となることが期待される。
子どもの成長43 2026/05/13 「痩せていても食事を制限してしまう」 研究の背景:多施設共同研究で十分なサンプルを確保して網羅的に解析 神経性やせ症は代表的な摂食障害であり、太ることへの恐怖やゆがんだボディイメージなどから、極端な食事制限を続けて深刻な体重減少に至る精神疾患。米国の調査では生涯有病率は女性0.9%、男性0.3%であり、女性の有病率は、代表的な精神疾患である統合失調症を上回るほど一般的。また、標準化死亡率は5.86と、精神疾患の中で最も高い重篤な疾患と言える。 神経性やせ症では、食事制限による栄養不足が脳の機能変化を引き起こし、それがさらに太ることへの恐怖や身体への不満を増大させ、さらなる食事制限を招くという「悪循環」が生じていると考えられている。この悪循環の中核をなしていると考えられているのが、脳の「島皮質」と呼ばれる部位の機能異常だ。島皮質は、身体感覚や内臓感覚、嫌悪感や恐怖といった感情、そして味覚や食べ物に対する判断に深く関与している。 同研究チームはこれまでにも、脳の活動状態を調べることができるfMRIを用いて、島皮質の安静時の機能的結合性を調査する研究を数多く行い、神経性やせ症では島皮質の異常活動がみられることを繰り返し報告してきた。 ※機能的結合性:脳の領域間の機能的な結びつきの強さ。fMRIで捉えられる脳の各領域における血中の酸素濃度変動がどの程度同調しているかを基に算出される。 しかし、先行研究はサンプルサイズが小さく、さらに解析の際に島皮質を一つのまとまった領域として扱っていたため、詳細な機能変化の解明には限界があった。近年の研究では島皮質は細かく機能分化しており、身体感覚処理、情動処理、味覚処理など領域ごとに異なる役割をもつことが明らかになっている。 本研究では、多施設共同研究により十分なサンプルサイズを確保したうえで、島皮質を機能別に六つの領域に分け、それぞれの領域と全脳の安静時機能的結合性を解析することで、神経性やせ症において生じている島皮質の機能異常を網羅的に解明することを目指した。
子どもの成長42 2026/05/12 「痩せていても食事を制限してしまう」のは味覚処理機能の異常が原因か? 神経性やせ症の脳機能異常を解明 神経性やせ症では「味を感じる」脳の領域の機能低下や、味覚に対する嫌悪感の学習が成立しやすくなっていることが示唆されるとする研究結果が報告された。千葉大学や国立精神・神経医療研究センターなどの研究チームによる成果であり、「Scientific Reports」に論文が掲載されるとともにプレスリリースが発表された。神経性やせ症状の中核症状である「痩せていても食事制限を続けてしまう」という行動には、肥満恐怖やボディイメージ障害とともに、脳の機能異常に伴う味覚処理異常が寄与している可能性があるという。 研究の概要:神経性やせ症の病態に関与する大脳島皮質の脳機能異常を詳細に検討 この研究は、千葉大学子どものこころの発達教育研究センター、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究、東北大学、京都大学、産業医科大学、九州大学との共同研究によるもので、身体感覚や味覚処理を司る領域であり、神経性やせ症の病態への深い関与が疑われている大脳の島皮質の各領域で生じている脳機能異常を詳細に検討した。その結果、神経性やせ症では「味を感じる」脳の領域である一次味覚野の機能低下や、味覚に対する嫌悪感の学習が成立しやすくなっていることを示唆する、脳の機能異常が生じていることが判明した。これらの味覚処理異常は、肥満恐怖やボディイメージ障害とともに、神経性やせ症状の中核症状である「痩せていても食事制限を続けてしまう」という行動に寄与している可能性があると考えられる。
子どもの成長41 2026/05/11 高炭水化物食や加糖飲料の摂取などの食習慣やダイエット願望が、大学生の抑うつレベルと有意に関連 QIDS-Jスコアが21点以上だった2名の学生の特徴 本研究では、QIDS-Jスコアが21点以上で最重度の抑うつに該当する学生が2名存在していた。 1人は22歳の女子学生で、QIDS-Jは21点であり、BMIが16.9であるにもかかわらず「ダイエット願望あり」に強い同意を表していた。記述回答から、この学生は栄養不良がモチベーションや集中力の低下につながることを自覚しており、それによる無気力が食事摂取の負担感を増大させて、悪循環に陥っていることが示唆された。 別の1人は24歳の男子学生で、QIDS-Jは24点と解析対象者の中で最高値だった。BMIは22.8と基準範囲内だったが、高炭水化物食品を毎日摂取しバランスのよくない食生活を送っていた。この学生は、精神的ストレスを感じると食事が乱れ、それが自己嫌悪を招来することを認識していた。これは、本研究で検討しようとした、乱れた食生活がうつにつながる可能性というより、メンタル状態の悪化が食生活の乱れにつながっている可能性を示唆していて、いわゆる「因果の逆転」と考えられた。 スポーツを行っている学生では、加糖飲料はうつレベルに悪影響を及ぼさない可能性 著者らは、本研究の限界点として、横断研究であるため因果関係の考察は制限されること、調査に用いた食行動の質問項目がオリジナルであり精度検証がなされていないこと、うつレベルに影響を及ぼし得る食習慣以外の因子を評価していないことなどを挙げている。 そのうえで、「国内の大学生の特定の食習慣が、うつレベルに影響を及ぼし得ることが明らかになった。加糖飲料の摂取、朝食の欠食、高炭水化物食、栄養バランスの悪い食事、不規則な食生活、ダイエット(減量)の希求は、うつレベルを高める可能性がある」と総括している。 また、「これらの中で、高炭水化物食の摂取がうつレベルの上昇と最も強い関連があった。一方で加糖飲料の摂取は寮生と非寮生で関連が異なり、寮生は加糖飲料の摂取量が多いほどうつレベルが低かった。これは、寮生には運動部に所属する男子学生が多かったためであると考えられる。因果関係は断定できないが、激しいスポーツを行う学生にとって、加糖飲料は抑うつ症状に悪影響を与えないのではないか」と付け加えられている。