幼保小の協働による架け橋期の教育の充実 34 2024/11/15 3.特別な配慮を必要とする子供や家庭への支援 (1)現状と課題 ○ 障害のある子供や外国籍等の子供など、幼児教育施設や小学校・特別支援学校において特別な配慮を必要とする子供が多数になってきており、その対応が増加しているとの指摘がある。 ○ 特別支援学校や小学校の特別支援学級に在籍する子供は増加し続けており、小学校の通常の学級においても、通級による指導を受けている子供が増加するとともに、小学校1年生の通常の学級に一定の割合で特別な教育的支援を必要とする子供(知的発達に遅れはないものの学習面又は行動面での著しい困難を示す子供)が在籍しているという推計もある。 ○ また、全ての小学校の先生に特別支援教育に関する知識が求められているが、実際には、特別支援教育コーディネーター以外は発達障害や医療的ケア児等の知識を有していない場合がある。さらに、幼児教育施設における子供の障害等に応じた支援が小学校に引き継がれず、支援が分断されているとの指摘もある。 指摘もそのとおりですが、私たちにおいても発達障害や医療的ケア児に対応するだけの知識や人員もいません。学校も同じですが、障がいのあるなしの判断を受けた児童生徒だけでなく、すべての子どもが健やか育ち学べる環境を作るためには専門性を持った職員の配置も必要です。現行の教諭に今以上の負担を強いるのではない体制整備が必要です。もちろんそういた職員へ任せるだけでなく、専門性を高めていく必要もあります。その上で懸け橋となる就学前施設と学校の専門性の向上も必要です。
幼保小の協働による架け橋期の教育の充実 33 2024/11/14 ②ICTの活用による教育実践や子供の学びの見える化 ○ 幼児教育施設においては、ICTを活用したドキュメンテーションやポートフォリオといった子供主体の遊びを通した学びの記録により、日々の教育実践や子供の学びを「見える化」し、先生の教育の意図や環境の構成の工夫等を併せて伝えることにより、幼児教育の特性や教育方針等について、保護者や地域住民の理解を深めて信頼を得る取組が行われてきている。 ○ また、公開保育など保護者や地域住民等が参加する機会においても、子供主体の遊びを通した学びを記録したドキュメンテーション等により「見える化」を行い、保護者や地域住民等の理解や対話を促進する取組が行われている。このような取組を進め、保護者や地域住民等の幼児教育施設の運営や教育活動への理解を促進し、「社会に開かれたカリキュラム」や「社会に開かれた幼児教育施設づくり」につなげていくことが期待される。 ○ 国や地方自治体においては、幼児教育施設におけるICTを活用した幼児教育のプロセスと子供の学びの「見える化」と、「見える化」による保護者や地域住民との連携の好事例等を収集し発信することにより、幼児教育の特性について社会の認識も高めていくことが重要である。 見えるかとても大事です。さらに、可視化したものをどうとらえるか、人それぞれでもいけないと思います。だからこそ様々な視点(複数の目)で捉えること、そのことを言葉や文字で示すことが先で、その次に捉え方の視点の標準化に繋がればと考えます。もちろんこのことに形や標準的なものはありません。しかし、子どもの良さを引き出す視点においては共通理解、相互理解となるような共有する視点も必要です。
幼保小の協働による架け橋期の教育の充実 32 2024/11/13 ○ このように、遊びを通して学ぶという幼児教育の特性を踏まえ、日本語の豊かな表現に慣れ親しみ、楽しく遊びながら日本語感覚を身に付けることによって、コミュニケーション能力や自己表現する感性を育むなど、言葉を豊かにする遊びの工夫が必要である。このことは、将来の小学校教育において、語彙量を豊かに増やしていく学びにもつながると考えられる。 ○ なお、幼児教育施設での生活においては、直接的・具体的な体験が重要であるが、ICTを活用することにより、遊びの展開の一層の充実を図り、より深い学びに向う教育活動を実施することも可能である。その際、ICTの特性や使用方法、子供の発達等を考慮しつつ、子供の直接的・具体的な体験を通じた学びを、更に深い学びにするための工夫を行いながら活用することが重要である。ICTの操作の習得を目的としたり、先生の一方的な指導となったりすることなく、子供の興味や関心が広がるような豊かな体験が可能となるよう、ICTを活用することが必要である。 学校間のICT教育においてはまだまだ大きな差があると感じています。ある小学校においては、タブレットを使い、調べ、写真を添付してレポートをまとめたり、オンラインで意見の交換や互いが関わり合って作成し発表に結び付けたりする姿があった一方、学校においては連絡事項や課題をメールと同様な使い方だけやオンライン授業と言ってもただ通信、顔が見える活用だけであったり様々なようです。特に熊本市においては、熊本地震の前にクラスごとにつかる体制と地震後にはすべての子ども達への供給がなされたことで、コロナで一斉休校となったときには、学校からの連絡や配信、繋がることの活用もあり、今では全国に比べとても進んでいますよね。目指す方向性が示されており、さらにその先に進めるような活用方法を全国いたるところ、どこでもできることは学習の地域間格差をなくすことにもつながるように感じます。
幼保小の協働による架け橋期の教育の充実 31 2024/11/12 (2)目指す方向性 ①幼児教育の特性に関する認識の共有 ○ 幼児期は身体と感覚・感性を通じた体験が必要な時期であることや、幼児教育はいわゆる早期教育や小学校教育の前倒しではなく、子供が主体的な遊びの中で試行錯誤し考えたり、先生の関わりや環境の構成を工夫したりすることにより、「主体的・対話的で深い学び」を実現していることなど、遊びを通して学ぶという幼児教育の特性について、様々な研究や実践の成果に基づく知見を活用して幅広く伝えながら、社会や小学校等と共通認識を図っていくことが重要である。 ○ 例えば、いわゆる認知能力と非認知能力は相互に関連し、支え合って育っていくと言われている。子供の体験の幅を広げ、質を深めるための関わりや環境の構成に取り組むことが求められ、その際、言語や数量等との出会い、人やものとの関わりなどの中で感じたこと等も、子供にとっては貴重な体験であるということを認識することが大切である。 ○ また、教育が有する文化の伝達・継承機能を意識することが大切である。日常生活や自然の移り変わりに根差した言葉遊びなどを通 して、楽しみながら豊かな言葉や表現に触れる機会を つくるなどの配慮が重要となる。 例えば、 絵本や物語の読み聞かせなどを通して言葉に親しむことや、 子供が興味を持つような言葉の響き・リズムの面白さや身体を使った表現との組合せなどを生かした工夫をしつつ、日本語の伝統にある名文等の豊かな文章や表現の響きに親しむようにすることは、楽しい言葉や美しい言葉との出会いを通して言葉の感覚を身に 付けることにつながっていくと考えられる 。 幼児教育の特性に関する認識の共有こそ長年の懸念なのです。保育園イコール預かるところ。3歳からは幼稚園で学校教育。保育所からの入学者と幼稚園からの入園で違いがあるのでしょうか。今や3療育と言って幼稚園、保育園、認定こども園と就学前の教育保育については整合性を取り、取り組まれています。小学校の前倒し教育よりも非認知能力の芽生えこそ大事なのです。さらに就学前の保育においては履修主義とか修得主義の何かができるのはなく、できること知っていることをどう生かし、協働して展開することができるかにつなげるかが大切です。机に座って学ぶといった体系ではなく、遊びを通して学ぶ礎が大切であり、傍目には遊んでいるとしかとらわれていないことを保育の実践においても、まとめて社会に周知していくことも大切です。さらに「日本語の伝統にある名文等の豊かな文章や表現の響きに親しむようにすることは、楽しい言葉や美しい言葉との出会いを通して言葉の感覚を身に 付けることにつながっていく」とした表現当たり前のようで今一度見直したいことです。正しい言葉を使う、言葉で表現することの大切さ、友達言葉や極端な表現ではなく美しい言葉の礎となる体験も大切です。
幼保小の協働による架け橋期の教育の充実 30 2024/11/11 ○ 一方で、遊びを通して学ぶという幼児期の特性に関する認識が、社会的に共有されているとは言い難く、幼児教育については、いわゆる早期教育や小学校教育の前倒しと誤解されることがある。例えば、現在、令和3年答申を踏まえ、小学校以降においては1人1台端末等を日常的に活用し、「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実することが求められているが、小学校以降の教育を見通すことと前倒しをすることは違うことに留意しながら、幼児教育の充実を図ることが求められている。 ○ また、幼児教育の特性に関する社会や小学校等との認識の共有が未だ十分ではないことが、個別の幼児教育施設の状況や家庭環境等によって小学校入学時点で格差が生じていることや、小学校の入学直後から学習や生活になじめない子供がいること、施設類型や学校種を越えて相互理解を図ることが困難であることなど、接続期が抱える問題の背景になっていると考えられる。このことは、よりよい教育を通してよりよい社会を創るという理念を社会と共有して実現を図る「社会に開かれたカリキュラム」の観点からも、大きな課題である。 はっきり書いてありますよね。「小学校以降の教育を見通すことと前倒しをすることは違う」。小学校教育の前倒しをするといかにもなんでもできるように感じてしまいますが、学校で求められていることは「小学校の入学当初においては、幼児期において自発的な活動としての遊びを通して育まれてきた資質・能力が、低学年の各教科等における学習に円滑に接続するよう教育活動に取り組むこと」であって、前倒しを求められているのではないのです。させるやらせるで、ワークばかりよりも自ら探求心をもって経験したりすることが後からの学習に役立つ様に感じます。もちろん就学前の施設のみだけでは経験できない家庭における取組や経験体験も必要だと思います。