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園からの発信

子どもの成長44

2026/05/14

「痩せていても食事を制限してしまう」

研究の成果:神経性やせ症における味覚処理異常を示唆する変化が明らかに

本研究では、国立精神・神経医療研究センターの監修のもと、千葉大学、東北大学、京都大学、産業医科大学、九州大学で2014~21年の間に収集された、神経性やせ症患者女性114名(制限型61名、過食排出型53名)※と、対照となる健常女性135名の大規模fMRIデータを解析対象とした。島皮質を機能に応じて分割した左右6領域を関心領域※とし、6領域と他の脳のすべての領域との間で安静時の機能的結合性を算出し、神経性やせ症群と健常群で比較検討した。

※神経性やせ症の制限型/過食排出型:神経性やせ症は、過食や排出行動(自己誘発性嘔吐、下剤・利尿剤・浣腸剤の乱用)を行わない制限型と、過食や排出行動を繰り返す過食排出型の二つに分類される。

※関心領域:Region of interest(ROI)。解析の対象として選択した部位のこと。

その結果、神経性やせ症群では健常群に比べ、食物の認知的処理に関わる島皮質前部背側と、情動中枢として知られる扁桃体間の機能的結合性が上昇していた(図1の赤色強調部)。一方、舌からの味覚信号を脳の中で最初に受け取る一次味覚野である、島皮質中部後背側と頭頂弁蓋部間の機能的結合性は低下していた(図1の水色強調部)。また、これらの結果より統計的な信頼性は低かったものの、島皮質前部背側と小脳片葉間の機能的結合性の低下、島皮質中部後背側と中心弁蓋部間の機能的結合性の低下も認められた。

図1 神経性やせ症で生じた機能的結合性の変化

 

さらに、神経性やせ症の制限型(図2上)と過食排出型(図2下)をそれぞれ分けて健常群と比較すると、島皮質中部後背側と頭頂弁蓋部間の機能的結合性の低下は過食排出型でより顕著であるなど(図2下の緑色強調部)、神経性やせ症の中でもタイプによって生じている脳機能に差があることが示唆された。

図2 神経性やせ症の制限型/過食排出型と健常群の個別比較結果

 

一方、神経症やせ症患者で生じている島皮質前部背側と扁桃体間の機能的結合性の上昇は味覚嫌悪学習、すなわちある食べ物を食べた後に不快な症状(腹痛など)を経験すると、その食べ物の味に対して嫌悪感を覚えるようになるプロセスが過剰に働いていることを示唆している。また、一次味覚野である島皮質中部後背側と頭頂弁蓋部間の機能的結合性の低下は、神経性やせ症では一次味覚処理の異常が生じており、同じ食物でも以前と味が違って感じられてしまっている可能性があることを示している。さらに、島皮質中部後背側と頭頂弁蓋部間の機能的結合性の低下が、一般的に制限型よりも病歴が長い過食排出型でより顕著だったという結果は、病状の長期化に伴い、異常を引き起こす神経学的な変化も徐々に進行してしまう可能性を示唆している。

今後の展望:味覚処理異常を考慮した臨床評価へ

本研究成果は神経性やせ症患者における悪循環を維持してしまう、「痩せているにも関わらず食事制限をやめられない」という行動のメカニズムにおける、味覚処理異常の重要性を強調するもの。今後は臨床現場においても、味覚処理異常が神経性やせ症の病態理解や臨床評価の一助となることが期待される。

 

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