子どもの成長73 2026/06/24 中学・高校での運動部活動中の暴力によるPTSD・複雑性PTSDを国際トラウマ質問票で検出可能 中学や高校の6年間、運動部活動を行っていた成人を対象に、その活動中に遭遇した被暴力行為に伴うPTSDや複雑性PTSD(CPTSD)のリスクを、国際トラウマ質問票(ITQ)を用いて検出できるかを検討した結果が「Frontiers in Psychology」に掲載された。山梨大学大学院医工農学総合教育部の豐田隼氏らの研究によるもので、ITQの有用性が確認されるとともに、PTSDやCPTSDの関連要因が明らかになった。 学校の運動部活動中に受けた暴力による、その後の人生への影響を推し量る 国内の中学や高校の授業以外で行われる運動部活動では、伝統的に規律の維持が重視され、体罰を含む処罰による統制を美徳と評価する慣習が長く存在していた。2013年に日本スポーツ協会などの関連諸団体が「スポーツ界における暴力行為根絶宣言」を採択し改善の努力がなされているものの、2020年に国際人権団体が日本の成長期アスリートの暴力被害の実態に関する報告書を発表するなど海外からも問題視され、さらなる対策が急がれている。また近年では、身体的な暴力のみでなく、言葉による虐待などの心理的暴力に対しても、批判の声が高まりつつある。 関連情報 「スポーツ界における暴力行為根絶宣言」(日本体育協会、日本オリンピック委員会、日本障害者スポーツ協会、全国高等学校体育連盟、日本中学校体育連盟) 欧米を中心に行われてきた研究から、未成年期の被暴力体験は、心的外傷後ストレス症(post-traumatic stress disorder;PTSD)、成人後のQOL低下、摂食症、自尊心の低下、自傷行為、希死念慮などのリスクを高めることが明らかにされつつある。また、2018年に改訂された「国際疾病分類(international classification of disease)」の11版(ICD-11)では、PTSDとは別に「複雑性PTSD(complex PTSD;CPTSD)」という疾患カテゴリーが位置づけられた。CPTSDは、トラウマ体験が長期間続いた結果、PTSD症状に加えて感情調節の障害、否定的な自己概念、対人関係の困難さで構成される「自己組織化の障害(disturbance of self–organization;DSO)」も生じた病態とされている。さらに、PTSDとCPTSDの包括的評価ツールとして、「国際トラウマ質問票(International Trauma Questionnaire;ITQ)」が既に開発されており、臨床での使用も始まっている。 このように国際的には、身体的暴力に加えて心理的暴力を受けることによる長期的な影響の研究が進められているが、国内の学校の運動部活動中での被暴力体験によるPTSDやCPTSDのリスク評価に、ITQを利用可能か否かは検討されていない。今回紹介する豐田氏らの研究は、以上を背景として行われた。