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園からの発信

森林から草原へ 1

2023/02/07

人間が争いを始めた謎

『人類は700万年前に独自の進化の道を歩み始めました。そして、オランウータンもゴリラもチンパンジーもいまだに熱帯雨林という森林から離れられないでいる。人類の祖先だけがこの熱帯雨林を離れて、サバンナ・草原へと進出を始めたのです。草原ですから高い木がないので、地上性の肉食動物から襲われたら逃げ場所がないですよね。恐らく初期は、たくさん肉食獣にやられたと思うのです。そして肉食獣に対抗するために、大きな集団で暮らすことが必要になった。そのためにゴリラのような家族単位で暮らしている群れが集まって、複数の家族が集合してもっと大きな集団、いわゆる「共同体」を作るようになったのではないかと考えられるのです。でも、この社会の発展と進化の歴史が、暴力と戦争を生み出したことは間違いありません。』

これまでは、共有することや対等といったヒト社会の原型のようなことが垣間見れていましたが、肉食獣から守るために大きな集団を形成することになり、共感、共有の社会が少し大きくなり、集団間の争いへと繋がっているとの指摘です。さらにヒトの進化も加わってきます。

人間社会はどう生まれた 3

2023/02/06

『うつ伏せになって、シルバーバックが休んでいます。そこに赤ちゃんを連れたメスたちがやってきて、乳離れしたばかりの子どもたちを置いていくんですよ。そうすると、赤ちゃんは、このシルバーバックの背中によじ登って遊び始めて、お母さんがいないことを忘れてしまう。お母さんは子どもから解放されて、自分で餌を食べに出かけてしまいます。子どもたちにトラブルがあると、すかさず父親であるシルバーバックが仲裁をして、そのけんかを止めます。だから、ゴリラのオスはとても子育て上手。しかもシルバーバックの仲裁というのは、実に堂に入っている。えこひいきしないんですよ。平等な立場でつきあえるように父親は振る舞う。だから子どもたちは、小さい頃から対等につきあうということを覚えていくんです。こういう父親の役割を担うオスがいるゴリラ社会は、私から見ると人間の家族の原型に近いのではないかと思える。』

群れ、グループ、家族、その中において対等につき合うことを覚えるために仲裁を行い、優劣や格差をつけない配慮。家族の中での父性、社会を構築する上で家族においての配慮、人間社会の基本となる原型とも受け止められますね。

人間社会はどう生まれた 2

2023/02/03

『サルの社会には、争いを防ぐルールがあります。例えば、ニホンザルの群れ。最高位のオスを頂点とした階級社会を作っています。メスは血縁でまとまって、おばあちゃん・お母さん・娘が連携して一生絆は解けません。オスだけが、まとまっているメスの集団を渡り歩いていく。そして食物や交尾相手を巡ってけんかが起きそうになると、強い方に加勢して勝敗をつけて、けんかを鎮めます。だからサルの社会は「格差社会」なんです。いわゆる勝敗をつけて争いを止めるということをやってきました。

でもゴリラの群れは、違うのです。ゴリラの群れは、一夫多妻が多いです。複数のオスがいる場合もあるけれども、大体はメスの数の方がオスの数よりも多い。そしてニホンザルと違って、メスだけが群れを渡り歩くのです。あるいは一頭で暮らしているオスのもとにメスが走って、そこで新しい群れを作るということもあります。そういった群れの中では、トラブルが起こってもニホンザルのように勝敗をすぐ決めずに、お互いが対等な立場で引き分けられるように、第三者が仲裁に入るのです。そして特に重要なのは、ゴリラの群れでは、オスが父親の役割を立派に演じます。』

サル社会は格差階級社会、強いものが食も繁殖も独占。競争の中で生き延びる。類人猿のゴリラは仲裁、争うことを避ける。ヒトもどうやらそのような争いを避けて生き延びてきた。

人間社会はどう生まれた 1

2023/02/02

『人間以外の霊長類、サルや類人猿は、群れ社会を作って暮らしている種が多い。では、霊長類が群れを作る理由は何だろうか。それは、栄養価の高い食物を、みんなで探しそして安全に暮らすためです。捕食動物がたくさんいます。それに狙われたら死んでしまいます。その発見効率を高めるために、みんなで守り合いましょうという話だった。決して自ら動物を狩って、それを食べるためではない。霊長類は、もともと植物食ですから肉食ではないのです。サルたちが争うのは、その食物と子孫を残すための交尾相手を巡って起こるのです。』

群れなければ生き延びることができなかった。子孫も残せない。霊長類はとても弱い立場であったが、群れを作り、争うことをしなかったことがこれまで生き延びてきているのではないでしょうか。

人間の本性 7

2023/02/01

『そもそも「人間の本性は暴力的だった」という仮説は、第2次世界大戦後に出てきました。人間は昔から狩猟によって、進化の道筋を作りました。ハンティングに使う道具を、その後、人間へ向けて武器として使い、戦争を始めた。そういう仮説が現れたんです。これを「狩猟仮説」と言います。人間は狩猟によって進化した。そして戦いを始めた。

その説を取り入れた映画が、1968年に公開された「2001年宇宙の旅」という映画です。冒頭で、人間の祖先、これまで猿人と呼ばれていた200万年以上前の時代、動物の骨を使って狩猟を始めたというシーンがある。その後、その狩猟に使った動物の骨を人間に向け始め、他の集団を撃退するために武器として使い始めた。これはまさに狩猟仮説をもとにした映画です。ところが、この仮説は間違っていた。

人類の祖先が、槍(やり)などの狩猟具を使い始めたのは約50万年前です。700万年のうちの50万年です。そしてその武器を人間に対して向け始めたのは、わずか1万年前です。だから人類の進化の歴史の中で99%以上は、集団間の争いはなかったのです。とても戦争は人間の本性とは言えません。「2001年宇宙の旅」は間違っていたのです。

でも、なぜ人間は暴力性をこれほど強く持つようになったのか。それは人間が独自に発達させた、もともと暴力とは関係がなかった社会性の中に、秘密が隠されているのです。』

 

これらの歴史的な検証からも人間は集団間の争いはなかっただろうし、人間に対して武器を向けたのは長い人間の歴史でも、ごくごく最近になるということですね。そうしなければ生き延びれなかった。

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