Ⅱ 令和の日本型学校教育 50 2023/09/13 6.遠隔・オンライン教育を含むICTを活用した学びの在り方について (2)ICTの活用や,対面指導と遠隔・オンライン教育とのハイブリッド化による指導の充実 ⑦児童生徒の特性に応じたきめ細かな対応 ○不登校児童生徒,障害のある児童生徒,日本語指導が必要な児童生徒について,学校間,保護者,関係機関と児童生徒の状況を共有し,支援しやすい環境を構築するため,統合型校務支援システムの活用や帳票の共通化などを通じ,個別の支援計画等の作成及び電子化を進めることが必要である。例えば,都道府県やシステムの開発業者に対して,特別支援教育に配慮したシステム開発を促していく必要があり,個別の教育支援計画の項目の標準化が必要との指摘も踏まえ,今後,文部科学省において,速やかにその参考となる資料を示すなど,支援を進めていく必要がある。 ○また,こうした児童生徒の理解度や特性に応じた学習活動を進めるため,教師やスクールカウンセラー等による遠隔技術等を用いた相談・指導の実施やICTを活用した学習支援,デジタル教材等の活用を図るべきである。 ○さらに,障害のある児童生徒については,ICTの活用が有効であることから,その整備を適切に行うことが重要である。また,ICTを活用した学習支援と対面指導や教師を派遣する形を組み合わせた訪問教育を受ける児童生徒の学習機会を充実すること,遠隔技術を活用した自立活動の支援について実践的に研究を進めることが必要である。加えて,音声読み上げやルビ振り等の機能を持つ学習者用デジタル教科書について,障害のある児童生徒や日本語指導が必要な児童生徒等に対する活用を促すことも必要である。 学校教育の現場で教員の負担となっていることもこの特性に応じたきめ細かな対応であるという指摘もあります。誰もが同じようにできれば何ら負担もないと思いますが、それこそ個性を出せない状況にもなる。出来なきゃ阻害するのでしょうか?今の社会は。一律にはできないから家庭の状況や子どもの背景など十分に理解した職員が必要なのです。そのことは子どもの人権を尊重することであります。幅も広く発達は多様なのです。一斉画一的に同じように同じことを教え込む時代ではありません。様々なツール、特にICTも活用してすべての子どもへの教育を充実させることが国の使命ではないでしょうか。子どもにとって何が有効かも一人一人違うはずです。個を尊重しての対応が望まれます。
Ⅱ 令和の日本型学校教育 49 2023/09/12 6.遠隔・オンライン教育を含むICTを活用した学びの在り方について (2)ICTの活用や,対面指導と遠隔・オンライン教育とのハイブリッド化による指導の充実 ⑤高等学校における遠隔授業の活用 ○高等学校における同時双方向型の遠隔授業の実施について,単位数の算定,対面により行う授業の実施などの要件の見直しを行い,教師による対面指導と遠隔授業を融合させた柔軟な授業方法を可能とし,多様かつ高度な学習機会の充実を図るべきである。 ⑥デジタル教科書・教材の普及促進 ○教科書は,児童生徒に国民として必要な基礎的・基本的な教育内容の履修を保障するための各教科の主たる教材として,学校教育において重要な役割を果たしている。その役割を一層効果的に果たすことが期待される学習者用デジタル教科書については,1人1台端末環境が整備される中,ICTを活用した取組の一環として,普及促進を図ることが重要である。このため,学習者用デジタル教科書の今後の在り方等について,その効果・影響等について検証しつつ,使用の基準や教材との連携の在り方も含め,学びの充実の観点から検討を行うことが必要である。また,当該検討結果を踏まえた本格的な導入が見込まれる令和6年度の小学校用教科書の改訂までの間においても,紙の教科書との併用が可能な環境の下で,学習者用デジタル教科書・教材の学校現場における使用が着実に進むよう普及促進を図る必要がある。 デジタル教科書が出現するのでしょうね。デジタル化が進む社会とはどうなるのか、昭和世代の我々には未来社会がもう目の前に来たといったところです。ICTの利用はあくまでも学校の授業が充実することであり、そのことが生徒の学習の充実に向けられ、かつ、教員の負担軽減と両立が必要に思います。今はデジタル化により教員の負担がさらに増している状況ではないでしょうか。専門スタッフの充実も必要だと感じます。
Ⅱ 令和の日本型学校教育 48 2023/09/11 6.遠隔・オンライン教育を含むICTを活用した学びの在り方について (2)ICTの活用や,対面指導と遠隔・オンライン教育とのハイブリッド化による指導の充実 ③全国的な学力調査のCBT化の検討 ○GIGAスクール構想や国際的な学力調査のCBTによる実施の流れを踏まえ,全国学力・学習状況調査のCBT化について専門的・技術的な観点から検討を行うとともに,小規模から試行・検証に取り組み,課題の解決を図りつつ,段階的に規模・内容を拡張・充実させていくことが必要である。 ④教師の対面指導と遠隔授業等を融合した授業づくり ○学習活動の質を高めるため,児童生徒の発達の段階を踏まえ,学校の授業時間内において,教師による対面指導に加え,目的に応じ遠隔授業やオンデマンドの動画教材等を取り入れた授業モデルを展開するべきである。 「CBT」とは、Computer Based Testingの略称。 コンピューターを利用した試験の総称を指します。 紙の試験からコンピューターを使った試験にすることで、採点処理や結果通知に要する時間・コストを大幅に削減可能とするものです。CBT化の課題として、個人個人の技術力の差と、公正な学習環境を確保できるかという大きな課題があります。 この課題を解決するためには、便利な授業支援ソフトを利用するのが効率的とされています。最近、塾とかにも導入され、出来なかった問題をAIによって課題提示したり、弱点を補う課題を提示したり、学習においてはどんどん進化しています。そこまでであれば活用は有効だと思いますが、学ぶことと問題を解くことは少し違いもありますよね。
Ⅱ 令和の日本型学校教育 47 2023/09/08 6.遠隔・オンライン教育を含むICTを活用した学びの在り方について (2)ICTの活用や,対面指導と遠隔・オンライン教育とのハイブリッド化による指導の充実 ①ICTの日常的な活用による授業改善 ○ICTを“すぐにでも”“どの教科等でも”“誰でも”活用できる環境を整え,日常的に活用することにより,児童生徒がICTを「文房具」として自由な発想で活用できるようにし,「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善に生かしていくべきである。 ②学習履歴(スタディ・ログ)など教育データを活用した個別最適な学びの充実 ○学習履歴(スタディ・ログ)をはじめとした様々な教育データを蓄積・分析・利活用することにより,児童生徒自身の振り返りにつながる学習成果の可視化がなされるほか,教師に対しては個々の児童生徒の学習状況が情報集約されて提供され,これらのデータをもとにしたきめ細かい指導や学習評価が可能となる。また,一人一人の児童生徒の状況を多面的に確認し,学習指導,生徒指導,学級経営,学校運営など教育活動の各場面において,一人一人の力を最大限引き出すためのきめ細かい支援が可能となる。 このため,教育データ利活用の基盤となるデータ標準化等の取組を加速しつつ,個々の児童生徒の知識・技能等に関する学習計画及び学習履歴(スタディ・ログ)等のICTを活用したPDCAサイクルの改善を図ることや,進学や転学等の際にも学校間で児童生徒のデータの引き継ぎを円滑に行うことなどにより,全ての子供たちの可能性を引き出すよう,個々の状況に応じたきめ細かい指導や学習評価の充実や,学習の改善を図ることが必要である。また,全国の学校でCBTを活用したオンラインでの学習診断などができるプラットフォームを構築するとともに,先端技術の持つ強みを最大限生かし,学校現場で効果的に活用できるよう,効果や留意点,活用事例等を整理・周知する必要がある。 教科について享受するだけ一方的な講義や説明であるなら全国一斉配信で事は済みます。大切なことは児童生徒の理解状況を把握したうえでのフォローだと思います。学習履歴だけでは判断できない部分をどう学校や教員が評価するか?テストだけでしょうか。PDCAサイクルが中心になるでしょうが、そのためには対面指導の大切さがあるのではないでしょうか。配信して終わりではないと思います。
Ⅱ 令和の日本型学校教育 46 2023/09/07 6.遠隔・オンライン教育を含むICTを活用した学びの在り方について (1)基本的な考え方 ○また,AI技術が高度に発達するSociety5.0時代にこそ,教師による対面指導や児童生徒同士による学び合い,地域社会での多様な学習体験の重要性がより一層高まっていくものである。もとより,学校教育においては,教師が児童生徒一人一人の日々の様子,体調や授業の理解度を直接に確認・判断することで,児童生徒の理解を深めたり,生徒指導を行ったりすることが重要であり,あわせて,児童生徒の怪我や病気,災害の発生等の不測のリスクに対する安全管理への対応にも万全を期す必要がある。 ○今後は,対面指導の重要性,遠隔・オンライン教育等の実践で明らかになる成果や課題を踏まえ,発達の段階に応じて,端末の日常的な活用を「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善に生かすとともに,教師が対面指導と家庭や地域社会と連携した遠隔・オンライン教育とを使いこなす(ハイブリッド化)ことで個別最適な学びと,協働的な学びを展開することが必要である。 その際,憲法や教育基本法に基づき,全ての児童生徒に対し,社会において自立的に生きる基礎や国家や社会の形成者としての基本的な資質を養うことを目的とする義務教育と,義務教育の基礎の上に高度な普通教育及び専門教育を施すことを目的とする高等学校における教育の違いや,教師の負担増にも留意する必要がある。 ○また,今般の新型コロナウイルス感染症対策のための臨時休業は,これまでも存在していた問題を顕在化させたという指摘もあり,臨時休業前から学校再開後の児童生徒の状況の変化を分析した上で,社会的・経済的条件の不利が,児童生徒の学習の格差につながらないよう,自然災害時でも児童生徒の学習を継続するための取組などを進める必要がある。その際,社会的・経済的条件に恵まれない児童生徒にとって,安全・安心な居場所,セーフティネットとしての学校の役割はより一層重要であることに留意するべきである。 熊本においては熊本地震、コロナ、水害などで学校の授業が止まることを経験しています。そういった中、特に熊本市においては早くから小中学校において一人1台のタブレットが準備できていたことはとても有効でした。今考えればまさかこんな時代になるなんて想像していなかったことも確かです。熊本地震の際に学校からの安否、健康チェック、学習課題の配信など子どもと学校をつなぐことができました。コロナ禍においてはそういった経験を踏まえ、さらに進んだ活用も行われました。国中一斉に学校の授業が感染症で休校になるなど、驚きの対応もありました。健康調査はもちろんのこと、課題をタブレットで行うことやクラス全員をつないでのリモートでの学活。授業も一方的ではありましたが配信されるなどの工夫もありました。大学においてもリモートでの授業が行われました。高等学校が一番の格差が起きたのではないでしょうか。学校によっては配信のシステムさえ整っていない時期もありました。いかなる場合でも学校と生徒がつながることが先決ですね。