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2023年 2月

暴走をもたらした「共感」8

2023/02/20

『音楽や共食、そして共同の子育てといったものは、共感力をさらに高めて、動物にはない自己犠牲の精神、自分が犠牲になっても集団のために尽くしたい、仲間を喜ばせたい。そういう気持ちを芽生えさせたのではないかと思われるんです。共感力によって共同体の結束を強めた人類は、アフリカ大陸を出て、ユーラシアや新大陸、オーストラリア大陸の多様な環境へ足を伸ばすことができたんです。

ところが共同体の結束を強める共感というものが、あるとき暴走して、それが戦争につながるようなことになりました。そのきっかけは約10万年前に登場した「言葉」だろうと思います。』

 

家族や共感するコミュニティが形成され、集団の規模も高まり、さらに集団同士の中に他の集団とのトラブル。その原因が言葉の進化だと指摘しています。脳の発達、コミュニケーションの発達、しかし反面そのことを外に向ける暴走に繋がり、争いへと繋がることになったと推察されています。

よく、連帯感とか一体感という言葉を学校生活や部活動にて耳にしますよね。指導者が命令してやらせても一体感は表面的であって、本来の共感にはつながりにくい。やはりそこは心がどう共感しているかによると思います。だからこそ表面上ややらされるばかりの集団では窮地には弱いことになる。共同体の結束は共鳴しての共感にあると。いずれにせよ、言葉による共感の暴走はヒトの歴史を大きく変えます。

暴走をもたらした「共感」7

2023/02/17

『人類の祖先も恐らく数十万年前から火をたき始めて、その火の周りで歌を歌ったり、太鼓をたたいたりして、リズムを取って踊ったかもしれませんね。歌や音楽というのは、対面しなくても、目と目を合わせなくても、その場に一緒にいる大勢の人たちが心を一つにして、共感力を高めることができるんですね。音楽は、最初はお母さんが子どもに対してあやす子守歌的なコミュニケーションだったと言われています。それが大人の間に普及して、お母さんと子どもの間に生じる一体感のようなものが生まれ、みんなで力を合わせてかん難辛苦を乗り越えようという気持ちが生まれたのではないかと考えられているんですね。』

音楽によって共感を高めあうことに繋がった。一体感がでてきた。心と心を通じ合わせることのできる音楽、ではないでしょうか。

暴走をもたらした「共感」6

2023/02/16

『もう一つ人類の祖先が共感力を高めることができたのは、「共同の子育て」にあると思います。ゴリラやチンパンジーと比較すると、人類はたくさん子どもを作る必要がありました。子どもの成長が遅いのです。肉食獣の多いサバンナで生き延びるために、たくさん子どもを作る必要があったということと、集団を大きくして防衛力を高めたため、それを何とかカバーするために家族だけではなくて複数の家族が集まって協力し合う集団、すなわち共同体を作る必要に迫られたのだと思います。メンバーが増えると、いちいち対面してコミュニケーションをとっているだけでは限界がありますよね。そこで生み出されたのが「音楽」というコミュニケーションだったと思います。』

 

動物は肉食動物に襲われるからこそ子どもをたくさん作る必要があったことも注視すべきことです。子育てに長く時間を取られる動物は数年に一度しか子を産みません。そして集団の防衛力を高める必要があった。

その中で集団での対面のコミュニケーションだけでは限界があることから「音楽」が生まれた。さらに祈祷や祈りの時にも使われたのではないかとも言われます。音楽に始まりについては諸説ありますが改めて触れたいと思います。

暴走をもたらした「共感」5

2023/02/15

『アフリカに狩猟採集生活を現代でも続けている人たちがいます。「ハッザ」と呼ばれる人たちです。この人たちは獲物をしとめるときに、ルールを持っているのです。もちろん獲物の取り方は現代の人たちですから、昔とは違います。でも獲物を取ってきたときに、それをしとめたハンターが独占するのではなくて、細かく切り分けて、ハンティングに参加した人あるいはキャンプで待っている人たちにも、ことごとく行き届くように分配するのです。徹底的に肉を分かち合う、そういう精神に満ちあふれています。こういった徹底的な分配を通じた平等性。能力がある人だけが利益を得るのではない、みんなで平等に食べ物を分かち合いましょうというルール。その中で、自分たちは一緒なんだ、という共感力を高めて、集団の結束力を強化したんだと思うのです。』

原始的な生活とはいえ、共有する、徹底的に分かち合う精神、共感力のうえに集団の結束が生まれています。家庭内、さらにはクラスや部活動など共感力を高めるには、共鳴、共有すること、食料や物だけでなく、考えに共鳴し、共感力を高めることが一体感につながり、そのことが集団の結束力をはぐくみ、強化に結びつくと感じます。

暴走をもたらした「共感」4

2023/02/14

『みなさんも1日の暮らしの中で、何度も他の人と対面していると思います。「なぜ対面するの?」と質問されたら、恐らく「話をしているからです」と答えると思う。でも、研究者はこう答えるのです。会話は声を出して意味を伝えあうコミュニケーションですよね。わざわざ対面しなくてもいいでしょう。後ろを向いてだって声は聞こえるわけだし、なぜ対面するのですか。それは「目」のせいなのです。類人猿の目は、白目がありません。人間の目は、白目があるのです。この白目があるおかげで、類人猿のように顔と顔を合わせるのではなくて、1~2m離れて対面すると、相手の目の動きが白目によって分かるのです。そうすると、その目の動きから相手の気持ちを察知することができるのです。

重要なことは、この能力は親からも学校からも教わったことがないということなのです。人間は生まれつき、白目の動きによって相手の気持ちを察するという能力を持っているのです。この白目は「共感力」を高めるために使われたと思います。その結果、高まった共感力を使って、分かち合いや平等といった人類独自の社会性を発展させていったと考えられるのです。』

 

ヒトが社会を作っていく段階での共感力、分かち合い、平等といった考え、この礎が人類における社会性であり、さらに社会性を発展させていったからこそ人類というものが続いてきた。700万年前の2足歩行で草原に出て、ヒトへの進化や生き延びる過程で共感力を高めた。白目を持っているのは人類だけですよね。察知する能力があってさらに相手の気持ちも分かり共鳴、共感となると感じています。また、目は口ほどにものを言うとも例えられます。目の表情によって好意的な感情を読みとったり、逆に怒りなども読み取れます。人社会において互いをいがみあってもよい社会は作れません。

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