子どもの成長109 2026/08/17 「熱中症を防ぐ」 暑さ指数「WBGT」の活用 熱中症の危険度を示す指数にWBGT(Wet Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度)がある。気温、湿度、日射や輻射(ふくしゃ)、風といった要素から熱中症の危険度を示す指標だ。乾球温度計、湿球温度計、黒球温度計を使って計算し、熱中症の危険度を示してくれる。わが国の夏は気温が高いだけでなく、湿度も高いためこのWBGTを用いた客観的な指数によって熱中症の危険度を把握する。 環境省の熱中症予防情報サイトでは、全国約840地点におけるWBGTの現在値(実況推定値)と予測値が公開されている。 環境省の熱中症予防情報サイト このWBGTと、スポーツ活動を行う際には日本体育協会による「熱中症予防のための運動指針」(表2)、日常生活を送る上では日本生気象学会による「日常生活における熱中症予防指針」(表3)を組み合わせ、さらに、年齢やその日の体調も考慮に入れて活動の指針とする。 表2 熱中症予防のための運動指針 運動前、運動中、運動後の水分補給 上記の「熱中症予防のための運動指針」ではWBGT31°C以上の運動は原則として中止とされているが、長期間の休暇が設けられるこの時期は、スポーツの大会や集中合宿が全国各地で行われる。また、小児や学生の部活動などは、普段は授業後に行われる練習が炎天下の日中に行われることも多い。 熱中症の予防もさることながら、暑熱対策の一環として正しい水分補給法を身につけておくことが、競技者の身を守り、高いレベルのパフォーマンスを維持するためにも重要だ。また、脱水を起こしやすい高齢者や小児、体調管理が未熟な学生らに対しては、指導者や責任者の目の届く範囲で運動する環境づくりを徹底したい。
子どもの成長108 2026/08/14 「熱中症を防ぐ」 運動・スポーツ実施時、夏季イベントでの注意点 スポーツによる熱中症のリスク スポーツは、それ自体が熱中症のリスクとなる。身体活動によって体温が上昇し、かつ、発汗により脱水になりやすいからだ。 スポーツによる熱中症は気温の高い7月下旬から8月上旬にかけて多く報告されている。また6月中の発生も少なくない。その理由は、からだがまだ熱さに慣れていないため、環境温度がより低温でも熱中症に至りやすいためとされている。 どのようなシチュエーションで熱中症が発生するかをみてみると、ランニング等の直後の発症が多いという。また、意外なところでは、プールでの練習中の発症も報告されている。水泳中は、実際には発汗していてもそれに気づきにくいこと、自由な水分補給が可能な環境があまり整備されていないこと、屋外プールでは直射日光に当たること、などが理由に挙げられる。 表1 熱中症の症状と重症度分類 スポーツ庁は、動画「熱中症を予防しよう―知って防ごう熱中症―」を公開している。動画では、児童や生徒らの部活動、体育などスポーツ活動時に熱中症が発生した場合を想定し、熱中症の発生メカニズム、症状、対処法がまとめられている。実際の現場に近い状況で起こる熱中症の症状と重症度の判断が動画で確認でき、専門の医師による解説も付け加えられている。指導者、選手、家族ら関係者は必ず見ておきたい内容だ。 【スポーツ庁】熱中症を予防しよう―知って防ごう熱中症― https://sports.go.jp/movie/post-23.html
子どもの成長107 2026/08/13 「熱中症を防ぐ」 熱中症の発生状況 先に述べたように、熱中症による緊急搬送者数は昨年、10万人近くに及んだ。その前年までもおよそ5万人前後で推移している1)。 熱中症による救急搬送人員数と初診時死亡数の年別推移(6月〜9月) ※2014年までは5月分の調査を行っていないため年別推移のグラフは6~9月で作成 「平成30年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況」(総務省)より引用改変 参考:過去の全国における熱中症傷病者救急搬送に関わる報道発表一覧 年齢をみると、約半数が高齢者、4割弱が18歳以上の高齢者を除く成人、1割強が7~17歳であり、この割合に大きな変動はみられない。 発生場所について平成30年の統計をみると、4割が住居で最も多く、続いて道路13.4%、屋外の公衆スペース12.8%、仕事場1(道路工事現場、工場など)10.8%であり、屋外での発生が少なくないことがわかる。近年、高齢者が自宅で熱中症になることへの注意喚起がよくなされているが、屋外活動中の注意もやはり万全の対策が必要と言える。その他の発生場所は、屋内の公衆スペース9.2%、教育機関内6.7%などが続く。 医療機関での初診時の重症度は、軽症が65%、中等症が32%、重症が2%であり、この割合も経年的な変動はあまりない。なお、軽症とは救急搬送されたものの入院加療を必要としなかったケース、重症とは3週間以上の入院加療を要したケース、中等症は軽症・重症および死亡以外のケースを指す。 重症度チェックポイントと周囲の対応 先に挙げた熱中症の症状がみられた時、その周囲に居合わせた人の迅速な対応が転帰を左右する。まず、重症度を把握し、適切と思われる対処をする。 重症度は、意識がはっきりしているか否か、水分を自分で飲むことができるか否か、応急処置によって症状が改善したか否かという三つのポイントで判断したい。環境省の「熱中症環境保健マニュアル 2018」では、重症度に応じて、救急要請する、医療機関の受診に付き添うなど、周囲の人がなすべきことをフローチャートで示している。 熱中症の応急処置
子どもの成長106 2026/08/12 「熱中症を防ぐ」 熱中症の症状と応急処置 昨年(平成30年)5~9月における熱中症による救急搬送者数は累計9万5,137人と、10万人近くに上り、そのうち初診時の重症度が中等症以上だったケースが35%を占め、160名が亡くなった1)。ただしこの死亡者数はあくまで初診の段階での数値であり、治療介入の甲斐なく亡くなられた方の数値を含んでいない。熱中症による死亡者数については平成29年に635人と報告されていて、過去には平成22年に1,731人という記録もある2)。 熱中症のリスクはさまざまなところに潜んでいて、対策をし過ぎるということはない。熱中症対策に関しては既に多くの報道がなされているが、ここで改めて数回に分け注意点を整理してみたい。まず初回は、熱中症の症状と発生状況について。 熱中症とは~原因と症状 熱中症とは、体温が上昇し体内の諸臓器が高温になることにより発生する障害をいう。重要なこととして、最悪の場合、死に至るという点を念頭に置いておかなければならない。 体温が上昇してしまう原因として、環境温度が高いことによる直接的な影響だけでなく、高湿度や脱水のために発汗が抑制されて熱放散が減少することによる影響も大きい。これに加えてスポーツとの関連では、運動強度・時間の負荷が加わる。 これらのストレスによる体温上昇と脱水とにより、熱疲労や熱失神などが起きてくる。具体的な症状としては、めまい、たちくらみ、だるさ、手足のしびれ、頭痛、筋肉のこむらがえり、吐き気、嘔吐、意識の低下、痙攣などがある。
子どもの成長105 2026/08/10 8月の熱中症による救急搬送は3万1,526人 住居での発生が最多、高齢者が全体の55%を占める 結果の詳細 総数 令和7年8月の全国における熱中症による救急搬送人員は3万1,526人だった。これは、8月の調査を開始した平成20年以降、8月としては5番目に多い搬送人員。 図1 8月における熱中症による救急搬送人員数(年別) 内訳 年齢区分別の救急搬送人員 高齢者(満65歳以上)が最も多く1万7,273人(54.8%)、次いで成人(満18歳以上満65歳未満)1万1,487人(36.4%)、少年(満7歳以上満18歳未満)2,641人(8.4%)、乳幼児(生後28日以上満7歳未満)125人(0.4%)の順。 図2 令和7年8月の熱中症による救急搬送人員【年齢区分別(構成比)】 医療機関での初診時における傷病程度別の救急搬送人員 軽症(外来診療)が最も多く1万9,936人(63.2%)、次いで中等症(入院診療)1万741人(34.1%)、重症(長期入院)717人(2.3%)の順。 図3 令和7年8月の熱中症による救急搬送人員【初診時における傷病程度別(構成比)】 発生場所別の救急搬送人員 住居が最も多く1万1,579人(36.7%)、次いで道路6,288人(19.9%)、公衆(屋外)4,250人(13.5%)、仕事場(1)3,472人(11.0%)の順。 図4 令和7年8月の熱中症による救急搬送人員【発生場所別(構成比)】 5~9月の累計では過去最高になる? 前述のように、5~8月までの救急搬送人員の累計は、過去2番目の多さとなった。 以下のグラフを見ると、過去最高だった昨年を8月までの累計としては上回っており、今年の残暑の厳しさから9月の搬送数は昨年と同程度だったかもしれず、5~9月の累計では過去最高を更新することも考えられる。 図5 平成20年〜令和7年の熱中症による救急搬送人員の推移