子どもの成長128 2026/09/11 暑い季節にも身体活動を続けるための推奨事項を探る レビューの手法 スコーピングレビューのガイドライン(PRISMA-ScR)に準拠し、MEDLINE、SPORTDiscus、Web of Science Core Collectionの各文献データベースに2024年1月26日までに収載された論文を対象として、「ガイドライン」「身体活動」「高温」などのキーワードで検索を実施。ヒットした文献の参考文献や灰色文献(学術的なジャーナルに正式に発表されていない文献)の検索も行った。 包括基準は、CVD既往のある18歳以上の成人の暑熱環境での身体活動について、身体活動を制限すべき気温、推奨事項を述べている、英語またはフランス語の文献とした。低酸素環境、暑熱馴化、妊婦に関する報告は除外した。 特定した文献の特徴 一次検索で467報がヒットし、重複削除後に3名の研究者がタイトルと要約に基づくスクリーニングを実施。採否の意見の不一致は4人目の研究者との討議により解決した。70報に絞り込み全文精査を行い、最終的に32報を適格と判断した。 32報中15報は、政府の報告書、政策ガイドライン/意見表明などの灰色文献や書籍、専門家の見解/レビューなどだった。全体の59%は北米、22%がオーストラリア発の報告で、欧州とアジア(うち2報は日本)が各9%を占めていた。最も古い報告は1975年であり、2015年以降は毎年1報以上の報告がなされていて、2019~21年には3年間連続で3報が報告されていた。 心血管疾患のある人が安全に身体活動を継続するための推奨事項の策定が必要 32報中24報(75%)の報告は、身体活動を制限すべき温度の閾値を報告していた。また、78%は暑い日の身体活動に特化した内容で、残りの22%は暑い日の日常生活の一般的な推奨事項の一つとして身体活動を取り上げていた 触れられている内容は暑熱に関する事故の予防が最多であり(100%)、症状/有害事象(81%)、暑熱関連の健康リスク因子(56%)、治療法(53%)が続いていた。症状/有害事象について説明している26の報告を詳しくみると、熱中症についてはすべて(100%)が扱っており、その他、熱疲労(92%)、熱けいれん(50%)が頻繁に言及されていた。 CVD既往者の暑熱環境での安全な身体活動のための推奨を述べた報告はない その一方で、暑熱環境での身体活動に関連する可能性のある健康リスクとして、心血管イベントに言及している報告はみられなかった(0%)。ただ、20報(63%)の報告では、暑い天候での身体活動中または活動後に、特定の集団では健康リスクが高まると述べており、そのうち12報はCVD既往者をそのリスク因子保有者として挙げていた。しかし、それらの報告のいずれも、CVD既往者が暑い時期に安全な身体活動をけることに特化した推奨事項は示していなかった。 なお、熱中症による健康問題を予防するための最も多く挙げられた推奨事項としては、身体活動を中止するか涼しい時間帯に変更して行うこと(94%)と、十分な水分補給(84%)が挙げられる。
子どもの成長127 2026/09/10 心血管疾患既往者が暑い季節にも身体活動を続けるための推奨事項を探るスコーピングレビュー 心血管疾患を有する成人が、暑熱環境下でも身体活動を継続しようとする際の推奨事項を、スコーピングレビューで検討した研究結果が報告された。論文の結論は、「現時点で心血管疾患を有する成人の暑熱環境下での身体活動に関する推奨事項は存在しない」というもので、著者らはこのギャップを埋める必要性を強調している。 地球温暖化が、運動療法が欠かせない人たちのその機会を奪っている 心血管疾患(cardio vascular disease;CVD)の一次予防や二次予防において、身体活動が重要であることは論をまたない。しかし、CVD予防のための身体活動を妨げる因子として近年、地球の温暖化の影響力が急速に増大している。暑熱環境での高体温は、心臓の負荷の上昇、発汗による脱水とそれによる熱中症リスク、および心血管イベントや急性腎障害のリスク上昇を招く。このことから最近では、多くの国の公的機関や医学関連団体が、暑熱環境では運動を控えるようアナウンスをしている。 しかし、それらのアナウンスの大半は、一般の人の熱中症リスク回避を目的とするものであり、CVD既往者に対する何らかの付加的な注意または推奨は含まれていない。その一方で、暑熱負荷による心血管イベントのリスクが上昇する体温の閾値は、熱中症のリスクが高まる閾値よりも低い可能性が指摘されている。例えば、冠動脈疾患を有する患者では、熱曝露による体幹温度がわずか0.5℃上昇するだけで、心筋虚血のリスクが上昇するというデータが報告されている。 これらを背景として、今回取り上げる論文の著者らは、CVD既往者が暑い季節に身体活動を続けるための推奨に関する情報を、スコーピングレビューにより探索した。なお、スコーピングレビューとは、メタ解析などの詳細な検討をするほど十分な研究報告がない、比較的新しいトピックについて、全体像を把握するために行うレビューのこと。
子どもの成長126 2026/09/09 水分補給習慣・状態と健康関連行動・状態との関連 初日の朝の尿比重と2日目の朝の尿比重が正相関 初日の朝の尿比重と2日目の朝の尿比重との間に、有意な正の相関が認められた(r=0.69、p=0.03)。また、1日目と2日目の水分摂取量との間にも、有意な正の相関が認められた(r=0.71、p=0.02)。これら以外に、水分摂取量と尿比重との関連は認められなかった。 なお、選手はレース2日目に1日目よりも、水分を有意に多く摂取していた(p=0.003)。 単に水分摂取を増やすのではなく、タイミングを考慮することが重要ではないか まとめると、 選手はレースが進むにつれて、水分補給状態が悪化(脱水状態が増加)し、 選手は最初のレース狩猟の3時間以内に水分補給を行い、2回目のレース終了までその状態の傾向が維持され、 2回のレース終了後にはともに、ほとんどの選手が脱水傾向の状態にあり、 1日の水分摂取量と水分補給状態との間には関連がみられなかった。 著者らは、本研究においてアスリートは水分を自由に摂取できるにもかかわらず、尿比重の上昇が観察され、また尿比重と水分摂取量との間に明確な関係がないことが示されたことから、「アスリートは、競技中の運動強度に見合うだけの十分な水分を摂取できていない可能性が高い」と述べている。また、尿比重と水分摂取量が相関しない理由として、環境条件の影響を考察している。具体的には、今回の研究は比較的涼しい気温(11~12°C)、適度な湿度(65~75%)で実施されたため、喉の渇きが自覚されににくく、競技中の水分摂取の必要性に対する認識が低かった可能性があるという。さらに、選手が消化器症状の発現リスクを考慮し、意図的に水分摂取を控えていた可能性もあるとのことだ。 研究の限界点として、サンプルサイズが十分でないこと、尿比重は水分補給状態を評価する簡便な手法ではあるが、尿浸透圧ほど鋭敏には脱水状態を反映しない可能性があること、食事やナトリウム摂取量を評価していないことなどを挙げたうえで、結論は「オリエンテーリングの競技中、アスリートの水分補給状態が徐々に悪化していくことが観察された。この調査結果に基づけば、競技前、競技中、競技後にアスリートの水分補給を最適なレベルに維持するための戦略を採用することが非常に重要といえる。単に総水分摂取量を増やすのではなく、適切なタイミングでの水分摂取を奨励することが、コーチとアスリートの両者にとって重要な可能性がある」とまとめられている。
子どもの成長125 2026/09/08 水分補給習慣・状態と健康関連行動・状態との関連 トルコの国内選手権大会中に、選手の尿比重と水分摂取量を追跡 この研究は、トルコの全国選手権大会に参加した選手20人を対象に実施された。大会は2日間にわたって開催され、初日はチェックポイント数19、距離5.2km、2日目はチェックポイント数25、距離11.7kmだった。研究に参加した20人は競技歴が12.4±6.4年で国際レベルの実績があり、年齢は30.4±1.1歳、BMI22.5±0.5だった。 採尿は計6回行われ、初日は8時に初回採尿を行い、競技時間が10~13時で、競技終了後の13時30分と16時に採尿した。2日目は8時に初回採尿、10~14時が競技、14時30分および17時に採尿した。このほか、参加者には2日間にわたって水分摂取の記録を求めた。 なお、初日は気温11±2°C、湿度65±5%で、研究参加選手の走行距離は6.8±1.9km、所要時間48.5±19.2分であり、2日目は同順に12±1°C、75±5%、13±4.8km、106.5±45.1分だった。 尿比重は時間経過とともに上昇 解析の結果、尿比重には有意な時間効果が認められた(p=0.04)。詳しくは、初日の8時が1.019 ± 0.008、競技終了後の13時30分が1.023 ± 0.007、16時は1.018 ± 0.007であり、2日目は8時が1.019 ± 0.004、14時30分が1.026 ± 0.003、17時が1.022 ± 0.004だった。 尿比重が1.020以上で脱水傾向と判定される選手の割合も時間経過とともに上昇し、とくに2日目の競技後の14時30分には全員(100%)に脱水傾向が認められた。また、初日のレース終了後にその割合はいったん低下し、水分補給が行われたことが示唆されたが、2日目のレース後には初日よりも脱水傾向の選手が多かった。
子どもの成長124 2026/09/07 水分補給習慣・状態と健康関連行動・状態との関連 オリエンテーリングなど長時間の競技で水分不足を防ぐには、水分補給のタイミングが重要か オリエンテーリングにおける脱水リスクの実態が報告された。国際大会にも参加するエリートレベルにある選手を対象とする観察研究の結果であり、2日間の競技期間中、時間経過とともに尿比重が上昇したという。 脱水はオリエンテーリングの身体的かつ精神的パフォーマンスを低下させる 地図とコンパスを頼りに、森林や丘陵、市街地に設けられたチェックポイントを最短時間で通過するオリエンテーリングは、体力と頭脳を組み合わせたパフォーマンスが要求されるスポーツ。高い心肺機能と筋力、筋持久力を維持できるか否かが成績を左右する。長時間に及ぶ競技中、選手は発汗による水分喪失を防ぐために適切な水分補給戦略が重要となる。 脱水は身体的パフォーマンスのみでなく、精神的パフォーマンスも低下させ得ることが報告されており、オリエンテーリングに必要な意思決定力、集中力を阻害する可能性がある。とは言え、オリエンテーリングの競技中の脱水リスクの知見は乏しく、実態が明らかにされていない。これを背景として本論文の研究者らは、競技中に尿検体を複数回採取し尿比重の推移を検討するとともに、選手の水分摂取状況を把握した。