教育振興基本計画27 2025/03/05 Ⅱ.今後の教育政策に関する基本的な方針 ②誰一人取り残されず、全ての人の可能性を引き出す共生社会の実現に向けた教育の推進 (共生社会の実現に向けた教育の考え方) ○これまで学校では「みんなで同じことを、同じように」することを過度に要求され、「同調圧力」を感じる子供が増えてきたことが指摘されている。異なる立場や考え、価値観を持った人々同士が、お互いの組織や集団の境界を越えて混ざり合い、学び合うことは、「同調圧力」への偏りから脱却する上で重要であり、学校のみならず社会全体で重視していくべき方向性である。また、そのことを可能にするための土壌として、「風通しの良い」組織・集団であることが大切である。そのためには、子供のみならず大人も含めて、多様性を受け入れる寛容で成熟した存在となることが必要である。加えて、これまでの同一年齢で同一内容を学習することを前提とした教育の在り方に過度にとらわれず、日本型学校教育の優れた蓄積も生かして、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実していくことも重要である。 ○こうしたことを通じて、一人一人が自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重する共生社会を実現していくことが求められる。また、組織や集団における多様性の尊重は、イノベーション創出にもつながる重要な考え方である。 Paper People Standing in a Circle and One Red Paper Man Inside
教育振興基本計画26 2025/03/04 Ⅱ.今後の教育政策に関する基本的な方針 ②誰一人取り残されず、全ての人の可能性を引き出す共生社会の実現に向けた教育の推進 (共生社会の実現に向けた教育の考え方) ○また、一人一人のニーズに合わせた教育資源の配分を行うという「公平、公正」の考え方も重要となる。「多様性」、「包摂性」に「公平、公正」を加え頭文字を取ったDE&I(Diversity,Equity and Inclusion)の考え方も重視されてきている。 ○加えて、離島、中山間地域等の地理的条件にかかわらず、全国どこでも子供たちが充実した教育を受けられるようにすることが重要である。 ○こうした方向性は初等中等教育以降の教育段階においても重要であり、例えば大学や専門学校等の高等教育機関における障害のある学生・生徒の学習機会の提供や学校を卒業した障害のある人々への生涯学習機会の提供も充実していく必要がある。 ○一人一人が多様な他者を理解・尊重し、包摂的な社会を築いていくためには、例えば障害の有無にかかわらず共に学ぶ「交流及び共同学習」や、国内外において外国人児童生徒学生等と交流する留学・異文化交流・国際理解教育、地域で子供が交流・協働する体験活動やキャリア教育・職業教育など、自らとは異なる立場や地域にいる人々と接する機会や異なる環境に身を置く機会を持つことが重要である。
食育推進施策の基本的枠組み 84 2025/03/04 また、農林水産省では、栄養面や噛むこと、飲み込むことなどの食機能に配慮した新しい介護食品を「スマイルケア食」として整理し、消費者それぞれの状態に応じた商品選択に寄与する表示として、「青」マーク(噛むこと・飲み込むことに問題はないものの、健康維持上栄養補給を必要とする方向けの食品)、「黄」マーク(噛むことに問題がある方向けの食品)、「赤」マーク(飲み込むことに問題がある方向けの食品)とする識別マークの運用を平成28(2016)年に開始しました(図表2-3-2)。平成29(2017)年度には、スマイルケア食の普及をより一層推進するための教育ツールとして、制度を分かりやすく解説したパンフレットや動画を作成しました。令和元(2019)年度には、引き続きツールを活用し、スマイルケア食の普及を図りました。
教育振興基本計画25 2025/03/03 Ⅱ.今後の教育政策に関する基本的な方針 ②誰一人取り残されず、全ての人の可能性を引き出す共生社会の実現に向けた教育の推進 (共生社会の実現に向けた教育の考え方) ○一人一人の多様なウェルビーイングの実現のためには、誰一人取り残されず、全ての人の可能性を引き出す学びを、学校をはじめとする教育機関の日常の教育活動に取り入れていく必要がある。 ○近年、いじめの重大事態の発生件数や児童生徒の自殺者数は増加傾向であり、憂慮すべき状況である。また、不登校児童生徒数が増加しており、個々の状況に応じた適切な支援が求められている。児童虐待、ヤングケアラー、貧困など、子供の抱える困難は多様化・複雑化している。また、肥満・痩身、アレルギー疾患、メンタルヘルスの問題など、子供の心身の健康には多様な課題が生じている。さらに、特別支援教育を受ける障害のある子供は近年増加傾向にあり、医療的ケア児や病気療養中の子供に対する支援も重要である。性的マイノリティに係る児童生徒等へのきめ細かな対応も必要である。特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する指導・支援の必要性も高まっている。地域社会の国際化が進む中、我が国で学ぶ外国人の子供や海外で学ぶ日本人の子供の学びも保障されるとともに、多文化共生の考え方も取り入れていく必要がある。 ○誰一人取り残されず、相互に多様性を認め、高め合い、他者のウェルビーイングを思いやることができる教育環境を個々の状況に合わせて整備することで、つらい様子の子供が笑顔になり、その結果として自分の目標を持って学習等に取り組むことができる場面を一つでも多く作り出すことが求められる。 ○その際、支援を必要とする子供やマイノリティの子供の他の子供との差異を「弱み」として捉え、そこに着目して支えるという視点だけではなく、そうした子供たちが持っている「長所・強み」に着目し、可能性を引き出して発揮させていく視点(エンパワメント)を取り入れることも大切である。このことにより、マイノリティの子供の尊厳を守るとともに、周りの子供や大人が多様性を尊重することを学び、誰もが違いを乗り越え共に生きる共生社会の実現に向けたマジョリティの変容にもつなげていくことが重要である。
食育推進施策の基本的枠組み 83 2025/03/03 4 高齢者に対する食育推進 高齢者については、健康寿命の延伸に向け、個々の高齢者の特性に応じて生活の質(QOL)の向上が図られるように食育を推進する必要があります。 65歳以上の低栄養傾向の者の割合は、男性で10.3%、女性で20.3%です。特に、女性の85歳以上では、27.5%が低栄養傾向となっています(図表2-3-1)。 急速な高齢化の進展により、地域の在宅高齢者等が健康・栄養状態を適切に保つための食環境整備、とりわけ、良質な配食事業を求める声が、今後ますます高まるものと予想されます。そのため、厚生労働省では、平成28(2016)年度に「地域高齢者等の健康支援を推進する配食事業の栄養管理の在り方検討会」を開催しました。同検討会では、配食には医療・介護関連施設と住まいをできる限り切れ目なくつなぐ役割や、低栄養予防・フレイル予防に資する役割が期待されることに鑑み、地域高齢者等の健康支援を推進する配食事業において望まれる栄養管理の在り方について、「地域高齢者等の健康支援を推進する配食事業の栄養管理に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」という。)を取りまとめました。平成29(2017)年度は、配食事業者と配食利用者のそれぞれに向けた普及啓発用パンフレットを作成しました。平成30(2018)年度からは、事業者及び地方公共団体において、ガイドラインを踏まえて取り組んでいる先行事例を収集し、事業者及び地方公共団体向けの参考事例集を作成しています。令和元(2019)年度は、フレイル予防も視野に入れて策定された「日本人の食事摂取基準(2020年版)」を活用し、高齢者やその家族、行政関係者等が、フレイル予防に役立てることができる普及啓発ツールを作成しました。