教育振興基本計画106 2025/06/30 Ⅳ.今後5年間の教育政策の目標と基本施策 目標7 多様な教育ニーズへの対応と社会的包摂 (目標、基本施策及び指標) 【基本施策】 ○不登校児童生徒への支援の推進 ・令和3年度の小・中・高等学校における不登校児童生徒数は過去最多の約30万人となっており、その中でも特に、学校内外の専門機関等で相談・指導等を受けていない児童生徒のうち90日以上欠席している者が約4.6万人に上っている。不登校は誰にでも起こり得ることである一方、ひきこもりなど、将来にも長期に渡って影響を及ぼすとの指摘もあり、不登校児童生徒の教育機会の確保や相談体制の充実など、不登校対策を強力に推進していくことが重要である。このことを踏まえ、令和5年3月に策定した「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」等に基づき、①多様な学びの場の確保、②1人1台端末等を活用した早期発見・早期支援の実施、③学校風土の「見える化」を通じて、学校を「みんなが安心して学べる」場所にすることなどの不登校対策を推進する。 具体的には、不登校児童生徒の多様な教育機会の確保に向けて、不登校特例校の各都道府県・政令指定都市での1校以上の設置を本計画期間内において進め、将来的には、不登校特例校への通学を希望する児童生徒が居住地によらずアクセスできるよう、分教室型も含め、全国で300校の設置を目指す。また、校内教育支援センター(スペシャルサポートルーム等)の設置促進や、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの配置促進、オンラインの活用も含め、こうした専門家にいつでも相談できる環境の整備、ICT等を活用した学習支援やNPO・フリースクール等との連携等を含めた教育支援センター等を中核とした不登校児童生徒に対する支援体制の整備等を推進するとともに、困難を抱える児童生徒に対する支援ニーズを早期に把握するため、1人1台端末を活用した児童生徒の健康状態や気持ちの変化の早期発見、「チーム学校」による早期支援を推進する。 さらに、文部科学省においてこども家庭庁による居場所づくりの取組との連携を図り、「学び」と「育ち」の双方の観点からの支援を推進する。また、不登校児童生徒の保護者が一人で悩みを抱え込まないよう、保護者の会等に関する情報提供を通じて保護者への支援を行う。 ・これらの取組を通じて、学校内外の機関等で相談・指導等を受けていない不登校児童生徒を確実に支援につなげられるようにアウトリーチを強化する。 ・社会的・職業的自立に向けた実践的教育を行う高等専修学校は、発達障害や不登校等の特別の配慮が必要な生徒が一定割合在籍し、「学びのセーフティネット」として機能を果たしていること等を踏まえ、その運営にかかる支援について都道府県と連携しつつ推進していく。 ・また、不登校児童生徒本人等の声も踏まえつつ、近年の長期欠席者数や不登校児童生徒数の増加に係る要因分析を行い、今後の調査設計の改善も含め、要因分析の結果を踏まえた取組を推進する。 ・高等学校段階においても、多様な生徒が現籍校での学びを継続しながら、多様な学びを実現できるようにするための方策を検討し、その検討結果も踏まえながら、所要の措置を講じる。
食育推進施策の基本的枠組み 164 2025/06/30 事例:地域の食文化の継承(第34回国民文化祭・にいがた2019) 文化庁では、都道府県等と共催で、観光やまちづくり、国際交流、福祉、教育、産業などの施策と有機的に連携しつつ、地域の文化資源等の特色を生かした文化の祭典として、「国民文化祭」を昭和61(1986)年から毎年開催しています。 令和元(2019)年9月15日から11月30日までの77日間にわたり開催された「第34回国民文化祭・にいがた2019」では、新潟県南部の「妙高(みょうこう)・上越(じょうえつ)エリア」において、「発酵文化の礎を築いた先人たち」をテーマとして、地域の先人の偉業や歴史について振り返るイベントを開催するとともに、新潟県内の各小・中学校において、地場産の食材や郷土料理を取り入れた「和食給食」を実施するなど、和食のすばらしさを子供たちに伝えました。また、東京では、「国民文化祭・にいがた2019」のプレイベントとして、同年8月に、農林水産省の協力の下、次世代を担う子供や子育て世代に対し、新潟の食文化を発信するイベント「子供に伝えたい食文化~和ごはんってなあに?~」を開催しました。 (新潟) ○「発酵文化の礎を築いた先人たち」をテーマに、9月から11月に新潟県上越市(じょうえつし)、糸魚川市(いといがわし)、妙高市(みょうこうし)で、発酵の歴史を学びながら、郷土の発酵食品を使用した料理を味わい語らう「発酵リレートーク」、えちごトキめき鉄道の貸切列車を利用し、発酵文化を堪能する「発酵列車」といったイベントが実施され、発酵を中心とした地域の食文化を再認識する契機となりました。 ○「和食」をテーマに、地元生産者の協力の下、栄養教諭や学校栄養職員が中心となって「和食給食」を実施するなど、各学校で和食文化を次世代に継承する取組を実施しました。 (東京) ○新潟の食文化の魅力を通して、新潟で開催する国民文化祭への関心を高める親子向けイベント「子供に伝えたい食文化~和ごはんってなあに?~」を8月に渋谷区(しぶやく)で開催し、約60組の参加がありました。当日は、新潟の食文化を象徴する「お米」をテーマとした講演や、忙しくても身近な材料で手軽に調理できる「和ごはん」レシピの実演、クイズ形式で新潟の食文化や名産品を紹介するコーナーが設けられ、子供たちが楽しく学ぶ機会となりました。
食育推進施策の基本的枠組み 163 2025/06/27 また、大人を対象とした「郷土料理講習会」に加えて、小中高校生を対象とした「郷土料理出前講座」も実施しています。宇和島(うわじま)の郷土料理「ふくめん」や「宇和島(うわじま)鯛めし(*2)」などの紹介と調理実習を通じて、「おもてなし」の心から生まれ、創意工夫された料理をこれからも継承していくことの大切さを実感する機会となっており、多くの学校から実施の希望が寄せられています。 幼児健診会場での展示 さらに、郷土料理への興味や関心が低い若い世代への働きかけとして、幼児健診に訪れた保護者を対象に、郷土料理パンフレットの配布やパネル展示を行い、郷土料理に興味を持ってもらうきっかけづくりとしました。 宇和島(うわじま)の郷土料理は、代表的な農水産物である「鯛」や「みかん」などを余すことなく利用しており、食文化継承のための取組が、魚食の普及や地産地消にも効果があるものと期待されることから、今後も、幅広い年代に向けた取組を継続していくこととしています。
教育振興基本計画105 2025/06/27 Ⅳ.今後5年間の教育政策の目標と基本施策 目標7 多様な教育ニーズへの対応と社会的包摂 (目標、基本施策及び指標) 障害や不登校、日本語能力、特異な才能、複合的な困難等の多様なニーズを有する子供たちに対応するため、社会的包摂の観点から個別最適な学びの機会を確保するとともに、全ての子供たちがそれぞれの多様性を認め合い、互いに高め合う協働的な学びの機会も確保することなどを通して、一人一人の能力・可能性を最大限に伸ばす教育を実現し、ウェルビーイングの向上を図る。その際、一人一人が持つ長所や強みに着目し、可能性を引き出して発揮させていくという視点や、多様性の尊重によるマジョリティの変容を重視するとともに、各施策間のつながりを念頭に置いた対応が図られるよう取組を推進する。 【基本施策】 ○特別支援教育の推進 ・障害のある子供の自立と社会参加に向けて、障害者権利条約や障害者基本法等に基づき、障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に過ごすための条件整備と、一人一人の教育的ニーズに応じた学びの場の整備を両輪として、インクルーシブ教育システムの実現に向けた取組を一層進める。 ・その際、個別の教育支援計画・個別の指導計画の活用や合理的配慮の提供に加え、本人や保護者の意向を最大限尊重した適切な就学先決定の促進、自校通級や巡回指導の促進など通級による指導の充実、特別支援学校のセンター的機能の充実、特別支援学校を含めた2校以上の学校を一体的に運営するインクルーシブな学校運営モデルの創設及び外部人材の活用の推進等により、障害の状態等に応じて適切な指導や必要な支援を受けられるようにする。また、障害者理解に関する学習や交流及び共同学習の在り方等を周知するとともに一層の推進を図る。 ・さらに、校長のリーダーシップの下、特別支援教育コーディネーターを中心とした校内支援体制を構築するとともに、最新の知見を踏まえながら、全ての教職員が障害や特別支援教育に係る理解を深める取組を推進する。また、特に教師の専門性向上を図るため、特別支援学校教諭免許状コアカリキュラムに基づいた教職課程の充実や、特別支援学校教諭等免許状保有率向上の取組などを進める。 ・医療的ケアが必要な児童生徒等について、保護者の付添いがなくても安全・安心に学校で学ぶことができるよう、医療的ケア看護職員の配置の促進を含め、取組を推進する。また、病気療養児の教育支援や学びの場の実態を踏まえつつ、ICTを活用した遠隔教育推進にも取り組む。 ・障害のある児童生徒等が支障なく安心して学校生活を送ることができるよう、学校施設のバリアフリー化や特別支援学校の教室不足の解消に向けた取組を推進する。 ・障害のある児童生徒の教育機会の確保や自立と社会参加の推進に当たってのコミュニケーションの重要性に鑑み、ICTの活用も含め、障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じた教科書、教材、支援機器等の活用を促進する。
食育推進施策の基本的枠組み 162 2025/06/26 事例:食文化を大切に継承する「つなげよう宇和島(うわじま)の味」 宇和島市(うわじまし)(愛媛県) 郷土料理研究会の講演 宇和島市(うわじまし)では、郷土料理をつくる家庭が少なくなり、郷土料理の伝承が課題となっていることから、第2次宇和島市(うわじまし)食育プランにおいて「食を大切にし、健康で心豊かに生きる力を育む」を基本理念に、「食文化を大切に継承する」ための食育活動を推進しています。 宇和島市(うわじまし)の地場産物を使った郷土料理を楽しむ家庭を増やすことや、伝承できる人材を育成することを目的に「宇和島市(うわじまし)食生活改善推進協議会」と連携して、幅広い世代を対象とした事業を実施しています。 平成30(2018)年度に開催した一般市民向けの郷土料理研究会「つなげよう宇和島(うわじま)の味」の講演には市民92人が参加しました。たくさんのメッセージが込められている郷土料理について学ぶとともに、宇和島(うわじま)の郷土料理「ふくめん」の試食や鉢盛(はちもり)料理の展示、さらには作成した郷土料理レシピ集を通じて、宇和島(うわじま)の食文化について改めて考える機会となりました。 中学生による郷土料理「ふくめん」の調理実習